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小さなギモン調べてみました!

建築・不動産から言葉のトリビアまで、仕事の中で見聞きした小さなギモンを調べて報告していきます。

神社の話§1

私、一応、工学部建築学科卒業なのですが、専攻していたのは「建築史」でして、限りなく文系に近い方の分野でした。

所属していた研究室も当然ソッチ系でしたので、研究室内での論文発表も、設計や工法といった建築的なものではなく、「寄席建築について」とか「揚屋建築について」等、古建築の様式やその歴史について調べるようなものが主だったのでした。

結果、卒業論文も「神社建築」に関してのもので、神社建築の様式とその歴史について、特に「伊勢神宮」を中心に取り上げて、日本の古代宗教の成り立ちから建物としての神社の成立を紐解くような内容でして、つくづく文系なことをやっておりました。

そこで今回は、夏休みの旅先で神社を見かけたときに役立つ、「ちょっと面白い神社の見方」をご紹介したいと思います。

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■水棲動物の名前が付いた部材を探す。

厳密には神社建築だけに限ったものでは有りませんが、燃えやすい木造建築に対しての火伏せの意味もあってか、神社には水に関係のある生き物の名前が付いている部材がいくつか有ります。そういう部材を探して眺めるのも、神社建築の楽しみの一つです。代表的なものをいくつかご紹介します。

●魚・・・懸魚(げぎょ)
屋根の妻(屋根の横の三角形の部分)についているのが「懸魚」です。
魚の尻尾部分の形にも見えなくもないと思います。水に縁の深い魚を飾りとしてつけることで、火に弱い木造建築の「火伏せ」のおまじないとしたのが始まりのようです。懸魚.jpg

●魚・・・鰹木(かつおぎ)
これは現在では神社建築くらいでしか目にしないと思いますが、屋根の上に載っている横向きの部材が「鰹木」です。形が鰹節に似ているのでこの名前が付いたようですが、文字表現としては「堅緒木」「堅魚木」「勝男木」「葛尾木」等とも書くようです。元々は棟を押さえるための部材で、特に権力の象徴として部族の首長の家には大きなものをつけていたことが家型の埴輪等から推測されています。魚の「鰹」でなくて「鰹節」の形に似ているというところがポイントですね。鰹木.jpg

※鰹には見えなくても鰹節なら納得です。




●海老・・・海老虹梁(えびこうりょう)
回廊を支える柱と本殿の柱の間にかかる梁ですが、特に虹のように湾曲している梁を「虹梁(こうりょう)」といいます。その中でも海老のようなかたちのものが「海老虹梁」とよばれます。見ればわりと納得の形状ではないでしょうか。海老虹梁1.JPG

※まぁ、海老っぽいですよね。







●蛙・・・蟇股(かえるまた)
梁の上で、その上の重量を支えているように踏ん張って見える部材が、蟇股です。「かえるまた」と読みますが、「蛙」ではなく「蟇」の字でしか書きません。「蟇」を「かえる」と読むのは、この事例しかないんじゃないでしょうか。見た目に蛙が股を広げている形に見えるので、この名前が有ります。もとは構造部材ですが、時代が下るほど装飾性が高まり、様々な彫刻がはめ込まれているものも多く有ります。日光東照宮の有名な「眠り猫」がいるのも、この蟇股です。蟇股2.jpg

蟇股1.jpg

※右側が眠り猫です。






■鳥居と本殿の位置関係に注目する。

神社にお参りする際には、必ず鳥居をくぐりましょう。鳥居をくぐることで身が清められるという意味合いがあるからで、鳥居の脇を通ってお参りしてはいけません。

で、鳥居をくぐって本殿、もしくは拝殿(御賽銭を入れて拝む建物)に向かうわけですが、実は神社の入口たる鳥居からまっすぐ正面に本殿がある場合と、参道が折れ曲がって本殿がある場合があります。

基本的に鳥居の正面に本殿がある神社は、その土地を守ってくれる神様や朝廷の正当な系譜を持つ神様だけが出雲大社.jpg祭られている神社です。
一方、折れ曲がっている参道を持つ神社に祭られているのは、かつて朝廷が滅ぼした、もしくは討伐したその土地の神様である場合が多いのです。

この理由は「祟り(たたり)」と関係が有ります。
日本は古くから「祟り」を非常に恐れる国でして、恐れるあまりに滅ぼしてしまった相手も「神様」としてお祭りし、「祟らないで下さい」とばかりに拝むという事例がとても多いのです。
しかし一方で、かつての敵を正面から奉るのは抵抗があったようで、そのために本殿を正面に置かず、参道を曲げて配置すると言う、結構微妙な手法をとったのです。

もちろん地形的な関係や広大な敷地があって鳥居を多く配置している場合等、例外も沢山有りますが、鳥居をくぐってから参道が90度折れてからその先に本殿があるような場合には、このパターンが多いといえます。
現在祭られている神様の中に「天照大神」等の朝廷系の神様があった場合でも、神社の創建がかなり古い神社では、元々は違う神様がメインで祭られていた可能性が高いのです。

有名な「大国主大神」が祭られている「出雲大社」も実はこの事例だという説があります。
古事記では、国譲りが平和的に行われたかのような記述になってはいますが、実際には朝廷側が大国主側を滅ぼしたので、祟られないように神殿を造ったと言う説です。特に「出雲大社」では、本殿の中に祭られている神様(ご神体)の向きが西向きになっており、拝む人の方(正面)を向いていません。(図参照)
その上、お参りの際も、一般の神社では「二拝、二拍手、一拝」が通常ですが、「出雲大社」は「二拝、四拍手、一拝」となっており、「四」は「死」に通じることから「あなたはもう死んでいるので、祟らないで下さいね」と「死」を自覚させる為に「四拍手」を打つという説もあるほどです。

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気づいたら、結構な文章量になっていました。
やっぱり、この手の話しが私は好きなようです。

まだまだネタがありますので、次回以降でも少しずつご紹介したいと思います。

(冒頭に書いた「揚屋」の話も、いわゆる「吉原」での遊女との遊び方などを調べたりして、結構面白い話があるのですが、これもまた、別の機会に)

この記事を書いた人

斉藤 一則

斉藤 一則(株式会社マイザ)

事業企画担当。
遊休地や低利用建物の効率化提案から賃貸管理・リフォームサポートまで、建築・不動産関係が専門。
旅行好き。

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