温泉は不変、時代は変遷、価値観は変化。
 次代の湯治宿は何か、湯治場はどう生きるか。
 
 明治後期、二代目・志乃の夢枕にお告げがあり温泉が湧出し、
 同四十三年に創館と伝えられる東鳴子温泉の旅館大沼。
 百余年に渡り、快浴洗心・湯食同泉の場として、湯治の時空間
 をつなぎ伝える宿が、このたび改修いたします。
 
 風の又三郎のような六代目を膝に、ひと月も閉館して大改修に
 踏み切った五代目湯守は、笑っていいます。
 
 どこを改修したか分からないでしょうね。
 
 湯治場の最大の馳走は湯。その湯を、たゆとうと、七つの内湯、
 一つの離れ湯に、源泉かけ流しで朝から晩まで満たすべく、費
 用の殆どは配管交換となるのです。
 
 今度は、八つの内湯ですよ。
 
 いたずら笑いの目線の先は、いま座っているロビーのソファへ。
 坐り湯治!その生地は、地名由来の赤湯に倣って美麗なレッド。
 
 昔から海彦山彦の交流がある塩竈。その神社御門前にアトリエ
 構えた若手椅子職人が張り替えたソファは、尻が離さない心地
 佳さです。
 
 湯治スイートなる続きの間や、湯あがりにクールダウンしてくれる
 ブルーベリーの鳴子キールなど、遊び心でリノベーションの由。
 湯は癒で悠、そして愉で遊。総じて、ゆ。
 
 湯治の原点に立ち返り、しかし今の時代の新しい感性と出会って、
 またゆっくり次の百年を歩んでいく"ゆ宿"に、拍手。
 
 ※はなれ山荘 庭園露天「母里の湯」。雨の風情はひとしおです。
四方山雑記帳
東北・宮城・仙台マーケットの小ネタ小ばなし

 
						















