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マクロの眼

プロジェクトエンジニアを僭称(?)中

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年末も近くなると珍妙なニュースが出てくるわけですが、ここ仙台でも全国ニュースがあったですよ。

====ここから引用====

裸の40代男性、コインロッカー上段の中で体育座り 低体温症、周辺には衣服散乱 JR仙台駅

河北新報2018年11月19日版

https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201811/20181119_13041.html?fbclid=IwAR3aRllZV5yKLpuagdw0We5OiMZpqSMnSghZT-NNHLaUn3usK5xpudkybU0

19日午前9時半ごろ、JR仙台駅で「裸の男性がコインロッカーに入っている」と駅員が仙台中央署仙台駅交番に届けた。交番所員が駆けつけると、駅1階のタクシープール近くにある上下2段のコインロッカーの上段で、全裸の男性が背中を外側に向け、体育座りしているのが見つかった。
 同署によると、男性は市内の40代とみられ、ロッカー周辺には衣服が落ちていた。低体温症の症状が見られたため、市内の病院に搬送された。同署が詳しい事情を調べている。

====引用終わり====

2018年11月21日投稿

2018年も秋深いある日、それは起こった。
「最近変な事件が多いね。」
【駅のコインロッカーに裸の男が体育座り】。"秋の珍事"として、この日僕らの周りではその話題で持ちきりだった。
ただそれもその日だけのことで、翌日にはみんな忘れてしまった「小さな事件」。そう、この時は「それ」が始まりだとは知らないで。


▼▼▼


「そこの人!早くロッカーから出なさい!
月曜の朝の通勤時間も終わったころ、それでも人通りの多い仙台駅で警察官の大声が響き、突然あたりは騒然となった。
「こ、こいつどこから出て来たんだ・・・?」
ヨシトモ警部は前代未聞の珍事に戸惑いながらも、的確に若い部下を指揮しなければならない。警官奉職より18年。こんな事件は初めてだ。
「おい、確保!確保!
まずいな、やじ馬が集まってくる。

「ま、まて・・・、ここは【千代】駅?今日は、今日は何日だ・・・?」
「ああ?11月19日だよ。」
酔っぱらって日付も不覚か。ヨシトモは週初めの朝から憂鬱な気分になった。
「ちがう!そうじゃない、何年の、西暦何年の、【照和】何年!」
「昭和?何言ってんだべ。今は平成30年!来年元号変わっぞ!西暦2018年!」
若い部下がいらいらしながら答える。
「ヘイセイ?2018年?なんてこった・・・」
「おい待て、動くな!」
突然男はロッカーの前からペデストリアンデッキの上に走り出す。とっさのことでやじ馬も驚いて道を開ける。【男】はSS30に目線を移すと、驚愕のまなざしで呆然とそこに立ち尽くすのだった。

「なんてこった・・・。なんで【エスエス31】の上に『パラボラアンテナ』がない・・・?」
「ああ?震災の時に折れて、落っこちまったっちゃ?」
「震災?」
「7年前あったべ!覚えてねーだか!?1万人も死んだんだぞ!10mを越える津波が来て!隣の県じゃ原発も爆発するし。」
「1万人だと・・・?津波が10m?原発って『プロメテウス』のことか?爆発?そんな漫画みたいな・・・そんな巨大災害が現代科学が発達した21世紀にあるなんて、いったい・・・この『世界線』は・・・」
「いいがらいいがら、交番さ行くぞ・・・って、おい、まて!」

男は再び走り出し、仙台駅の屋上で追いついた警官たちに、今度は絶望のまなざしで叫ぶのだった。
「なんで、なんで大年寺山に電波塔が3つもあるんだ!」
「知らね!昔からあんだからしょうがねーっちゃ。」
「だいたいあの【那嘉邪馬】の丘にある白い巨大な観音像は何だ!」
「あれだって知らねーよ。バブルの遺産だべ。」
「バブル?【バブイルの塔】のこと・・・なのか?」
「ああ、バブルの塔っていう人もいんな。」
「お、お前たちおかしいと思わないのか?元号をわざわざ変える意味は。なんで大年寺山の上に、『同じような鉄塔』が3本もあるんだ!3本もある理由はなんだ?あんな巨大な観音像が立っているのが変だと思わないのか!!!」

2018-12-19 07.31.30.jpg

そういわれてみると確かに変だな・・・」
警官たちは顔を見合わせる。
そう言われてみれば確かに変だ。
リアクターが爆発するとか!10mなんて高い波が来るとか!1万人が死ぬとか!そんな荒唐無稽なことが。第一、【エスエス31】のパラボラアンテナがなければどうやって月基地に」

「ようこそ、【仙台】に・・・!」
警官たちの輪の外から、突然響く声。優雅にその男はコーラを飲みながら近づいて行った。
「久しぶりですね。」
「く、【黒い水】・・・。お、お前は・・・、カサマ・・・、なぜ生きている・・・?」
その【カサマ】と言われた男は、にっこりと笑顔で、だが冷たい眼差しで彼を見るのでした。
ひどく失望した表情でその彼はカサマを

捕捉)

とある文章作成の締め切りに追われて徹夜続きの中、どうしても「文章の神様」が降りてこず、こんな無駄な小説(?)を書いてうっ憤を晴らすある日。筆が止まったから違う文章を書く・・・!そう、私の大量のFacebook投稿の中から、あれらの報告書や申請書や執筆コラムが生まれているのだ・・・!

・・・いや、もうこのやり方、限界だな・・・

でも書いていて、よく考えると自分たちは変な世界にいるのかも?と思ったり。

夢ニ楽土、求メタリ。

西暦2001年9月ごろ 千代市若林区 国土交通省

「つまり建設中の仙台東部道路には津波を防ぐ機能はないのですね?」
道路ですから。例えば堤防のような強度はありません。」
「道路の本来機能は車を通すことで、堤防のような機能を持たせるためには、横方からの水圧に対して応力がどうたらこうたら~~~」
宮城大学の学部生であったカサマは授業のレポート作成のために、近年急速に整備が進んでいる仙台東部道路の意義について、国道4号線仙台バイパス沿いの国土交通省仙台河川事務所に取材に来ておりました。
取材の流れで、最近かほぴょん新聞で話題になっている「仙台平野を襲った巨大津波」の話題になったのです。
国土交通省2013-05-12 18.35.02.jpg
東部道路は東京から続く常磐自動車道と南側で直通し、北側で三陸自動車道と接続します。
さらに西に並行する東北自動車道と、これを繋ぐ仙台北部道路、仙台南部道路と接続されることで、日本の大都市の中では初めて環状高速道路網が完成することが予定されていました。
仙台環状道路.png
<出典:国土交通省>
ドイツのケルンを参考にした「ラダー型」と言われる道路配置。公式な構想は平成に入ってからですが、このグランドデザイン自体は既に昭和30年代には構想されていたようで、ドイツで学び、満州帝国の都市開発で辣腕をふるった都市計画の担当者たちが、もっとも理想的な道路網としてこれを設計したのです。
その正統な後継者たちである国土交通省仙台河川事務所の優秀な官僚とエンジニアは、実に理論的で科学的に一介の大学生に対して怒涛のごとく話すのでした。
「1,000年に一度の津波を想定してあらゆるものを作ったら、とても予算がいくらあっても足りないと思いませんか?」
「科学的には、ある一定水準を想定して決めるのが作法なのです。よく考えてみてください。1,000年に一度の津波の為に防潮堤じゃなくて道路を設計することは、論理的にも科学的にも予算的にもおかしいと思いません?」
「そうですよねぇ。」
東部道路2014-03-11 15.36.33.jpg
<震災後に設置された、仙台東部道路への津波避難階段(2014年3月11日撮影)。建設当時から必要性が訴えられていたが、国土交通省関係者だけでなく、カサマもそれが本気で必要になるとは思っていなかった。>
1000年に一度の大津波か・・・。
平安のころの歴史の出来事。歴史のロマン。
もしかしたら自分の子孫たちは、将来そんな大津波を体験するかもしれないな。
「ちなみに、この近くに浪分(なみわけ)神社という、千年前の地震の到達を記念したという伝説の神社(注:実際には400年前の慶長津波)があります。」
「浪分神社・・・。」
「自転車で15分ぐらい。」
「多賀城にある百人一首で読まれた『末の松山』も、津波を記念したものだそうです。でもまあ、考古学なんて科学じゃないですから。つい昨年、ゴッドハンドが発掘した座散乱木遺跡とか馬場壇A遺跡とか、全部偽物だったことが分かりましたし。」
一通りインタビューを終えて礼を言い、国土交通省を出ると、優秀な官僚とエンジニアの言った「浪分神社」というキーワードが頭に残っていました。そのまま自転車で浪分神社に向かうカサマ。
浪分神社P1270008.JPG
浪分神社は自衛隊霞の目飛行場のすぐ横にありました。
これがかつて津波の到達地点を記念したものという知識がなければ、単なるみすぼらしい神社にすぎません。
別段感動もなく、仙台大観音像を目指して四号線バイパスにもどると、遠見塚古墳が見えます。時間つぶしに周辺を散策しながら、「昔の人もよくぞこんな墓なんか無意味なもののためにお金と労働力を出したものだ。今とは違った公共事業の概念があったのだろうか?」と一人歴史ロマンと公共事業の感傷に浸ります。
遠見塚古墳2013-05-12 17.26.49.jpg
ふと、入口に目をやると、周辺の古墳を示した石板が埋め込まれていることに気づきました。しばしその地図を眺めていると、何か「いずさ」を感じ、不思議な事実に気づいたのです。
<動画>
「あれ?妙だな・・。末の松山から遠見塚古墳、浪分神社、大塚山古墳、雷神山古墳と、海岸から一定距離で一直線に分布しているぞ?」
つづく
次回「西暦411年@遠見塚古墳」を予定。
2011年3月11日(金) 2100頃  千代(センダイ)市若林区 通称「王の丘」
「なるほど、ローマ皇帝ネロが自分でローマを燃やして、その美しさをたたえる歌を作った気持ちが、1ミリグラムぐらいは分かる気がするな・・・」
マグニチュード9の空前の大地震と大津波に襲われた千代市
ブラックアウトして光を失った100万人都市の中、美しい星空の下でカサマは弘瀬川沿いのマンション、通称「王の丘」から津波が到達した大平洋を望んでいたのでした。
北方のコンビナートで炎が上がる様子は、一瞬不謹慎にもローマ皇帝ネロの逸話を思い出させるほど、不気味な美しさ
「これが予想された30年に一度の宮城県沖地震か・・・。しかし2分近く揺れたのに、建物が倒壊した様子は見当たらない。なんかラジオでは千代の海岸沿いに200人の遺体とか若林区役所まで津波到達とか言ってるけど、すぐそこの若林区役所は実際のところ普通に電気ついてるし。デマが拡散しているようだ。」
地震でコンビナートが燃えるのは想定内・・・!
異様に頭が冴えた気分で、冷静に状況を分析するカサマ。
ただ、気になったのは、コンビナートとは逆の南方の、漁港のある閖上(ゆりあげ)方面からなぜか炎と煙が上がっているように見えるところ。
津波で水に濡れているのに火事とは、はて?
「んだども、三日ぐらいで日常に戻るんでネスカ
普段使わない東北弁で独り言をつぶやいた後、やることがないのでその夜はさっさと寝ることにしたのでした。
・・・
翌日から人生最大の好奇心で、「宮城県沖地震」を堪能するために街中を自転車で徘徊するカサマ。
さらに翌日の13日には、とりあえず名取川沿いを下って、水に濡れているのに炎が上がっている不思議な現象の閖上に行ってみることにしたのでした。
河川敷ではのんきにキャッチボールをする親子。
何だ、やっぱり意外に地震は大したことがなかったのではないか?
しかし、15分も自転車を走らせると、船が河川敷に突き刺さっている異様な光景が広がり始めたのです。
そしてとうとう、名取川の土手を海に向かって仙台東部道路を超えると、途端に車が転がっている非現実的な光景が目の前に広がりました。
「あれ?仙台東部道路が津波の侵入を防いだ?」
車が散乱する中、さらに河口に向けて川の土手を走ると、見慣れない風景になりました。
「あれ?今度は貞山掘の松林がないぞ?」
約400年前位に伊達政宗が建造をはじめ、300年かけて100年前に完成を見た「貞山掘」の惨状。それを見た瞬間、あらゆる歴史の記憶と痛恨の想いが走馬灯のように一気にあふれてきたのでした。
「しまった、これは『貞観津波』・・・!」
宮城県沖地震が30年以内に起きる確率99%
宮城県民ならだれもが知っているその話。その「30年」という昭和の時間軸が、突如「1,000年」という平安時代のころの悠久の時間軸の出来事と気づいたとき、眩暈がしたのでした。
しかも自分はこの津波を知っていた。
その夜、ラジオで未だ続く、どうも現実らしい絶望的な放送を聞きながら、布団の中で悔しさのあまり、15年ぶりぐらいにマジ泣きしたのでした。
ああ、我々の科学と文明は負けたのだと。自分の洞察力は負けたのだと。
【つづく】
次回「2001年@国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所」を予定。

今年度のブログでは、笠間が個人的に大学時代から続けてきた津波被害研究の新連載シリーズ「千代物語のナゾ」を複数回お送りする予定です。

下記の写真は東日本大震災から1周年の閖上での様子です。東日本大震災で亡くなられた皆様のご冥福をお祈りいたします。

2010311閖上での祈り.jpg

この記事を書いた人

笠間 建

笠間建 (コミューナ・トランスレーション・デザイン有限責任事業組合)

事業連携担当。
プロジェクトエンジニアを僭称(?)中。PEは本来は工場オペレーション用語ですが、調査分析・事業企画・計画・実行など、プロジェクト全般を広義に「エンジニアリング」してきたキャリアパスで、他に良い表現が見つからないので。2008年9月から2010年8月まで、社会人学生として東京で貧乏大学院生生活を送っていましたが、2010年9月に無事修了して仙台に戻ってきました。
趣味は自転車、旅行、写真。

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