「六次産業化」というナゾの概念と思われたものも、ここ数年でここまでコトバが浸透するとは意外でしたが、以前のように一次産業の方が無理して加工工場を持ってしまったり飲食店をオープンしてしまったりする垂直統合モデルの例はだいぶ鳴りを潜め、最近は一次・二次・三次の各事業者間連携が主戦場になっている感。
それもそのはず。二次産業だってその分野のプロフェッショナルが専任でやっていたり、飲食店だってプロの仕事だ。自らの高い意志と詳細がある場合を除き、一般的な一次産業の方々に安易に加工業や飲食業を勧めるのはやめて差し上げなさい。
そんな中、「知られざるフルーツ帝国、みやぎ」の六次産業化のエコシステムの一部になりうる、注目の商品が誕生したですよ。
2018年12月11日
【宮城のフルーツベニエ、デビュー】
Cafe nijineco ハンドメイドドーナツカフェ さんの新商品、本日新発売。その新作発表会の運営に携わるなど。
本日のテレビ放送で知った方もいるのでは。
「ベニエ」は単にフランス語で「揚げた生地」を意味し、ドーナツの上位概念ともいえましょう。
それを「ドーナツ屋」であるnijineco さんが作っているところがミソ。しかも地元の農業生産者さんとコラボしている商品で、これがかなりの絶品。
途中、試作はラボタイプ、テストタイプ、プロトタイプ、モデルタイプの四段階を意識して、実に6回の試作ミーティングが実施されました(もちろん、nijineco 内部的な試作(ラボタイプ)は、無数に違いない)。
冷凍保存商材で、しかも「ベニエ」という聞きなれないネームと、一見するとBtoBには向かないように見えますが、ハイクオリティな専門特化型小規模事業者だからこそ、それはそれで1つのSTP(特にポジショニング)があり得るだろうというマーケティング判断。実際には流通させるため、かなり精密なプライシングもしとります。
通常量販品ではあり得ない量で、豊富にフルーツを使うにあたり、「フローズンドーナツ」ではなく、未だ知られざる上位概念「ベニエ」であったことが重要な戦略判断。
まあまずは皆、南仙台の東中田のお店に買いに行くべし!
(捕捉)
宮城県と言ったら、四の五の言わず米ッ、米ッ、米ッ、※ッ
という感じで稲作への偏重のイメージがあり、まあその通りなのですが、生産量だけでみるとリンゴ:全国9位、イチゴ:全国10位、ブルーベリー:15位、日本ナシ:17位と、フルーツもそこそこ生産されています。うまいことブランディングをじっくりとやれば、十分戦えそうな気もします。(というか、周辺の福島山形青森が凄すぎるんじゃい!)
そうした「知られざるフルーツ王国・宮城」の農家さんたちと連携した、この「フルーツベニエ」。
最初に補足コメントした通り、近年「六次産業化」が言われるも、1次産業の皆さんが加工業に進出したり飲食店を始めたりという無謀げふげふ、難しい案件は少なくなり、今や各次元での事業者同士の連携が主流になりつつあるというのが印象です。1次産業従事者がプロであるのと同様、2次産業もプロの仕事だし3次産業もプロの仕事なので、よっぽど豊かで余力のある一次産業事業者はともかく、ごく客観的に記述すると「何かしら困っている事業者が思い付きで他の業界に手を出す」というムリゲーというか死亡フラグ。ほら、こう書くと危なそうでしょ?
今回の「宮城のフルーツベニエ」は、まったく果物のイメージがない宮城においてあえてフルーツにフォーカスし、しかも「フルーツドーナツ」というドーナツセグメントではなくあえて「ベニエ」といういまだに一般的ではないお菓子カテゴリに挑戦したのは、徹底的に差別化を図り、以前から存在するものの組み合わせにもかかわらず「新規性」をとことん追求し、宮城のフルーツ業界とドーナツ業界で台風の目になるため。「街のドーナツ屋さん」が「BtoBを通して売上の上乗せ」をじっくりと商品を育てて行う。これが中規模以上の「食品加工メーカー」だったら、生産量が多くなくまだメジャーになり切れていない素材を使い、わざわざ誰も知らない「ベニエ」なる流通させにくいネーミングで攻めることは、マーケティング上できますまい。
「小規模事業者」であるからこそ、自分のお店を持っているからこそ、時間をかけて育てることができるからこその、中規模事業者以上が真似できない新たなるゲリラ戦術的という側面もあり、一つのモデルケースとして長い時間をかけてサポートしていきたいと思っております。