あらゆるものがロストしたロストジェネレーションであるところのカサマの世代は、「飲み会の席で日本酒を大いに飲む」という昭和期の慣行を現役で行う世代と、「そもそも飲み会って、お酒飲まなければダメですか?」という世代の双方に囲まれ、また双方を理解する特殊層なわけですが、そうは言っても「乾杯のビールの後は日本酒」などという、よく考えたら日本古来からの伝統でも何でもなく、おそらく100年も歴史はない近代的な慣行が、実はそもそも東日本特有の一時的な現象であり、東京以西は乾杯の後の飲み物は焼酎ベースかウーロン茶だということに気づいたのが2008年の東京留学時。
そうした中でも、カサマの東京時代の男友達は日本酒よりも焼酎が多い中、なぜか女友達は日本酒飲みが多く、しかも新潟の日本酒の名前をよく知っている(当時はまだ「獺祭」がこれほど首都圏でもてはやされる前)。確かに新潟は蔵の数や著名な銘柄も多いが・・・。
その背景のナゾを解くヒントを、先日新潟にサンセットを見に行くついでに道の駅で車中泊した際に偶然得たですよ。
2017年5月1日(月)
【トライアル&リピートモデル】
新潟市の道の駅「新潟ふるさと村」にて車中泊。
「政令指定都市の道の駅」の実力がいかほどのものか?そう思って入ると、想像以上の実力。これは凄い。
ちょうど県内の蔵のフェアをやっていたのですが、これがさらにびっくり。
ほとんどの蔵の主力商品で、個性豊かな「一合瓶」を用意しているではありませんか。まさか昨年優秀賞とった越路吹雪や最高金賞取った笹屋茂左衛門まで・・・。
これを売り場の前面に陳列して「売れ筋」にし、一升瓶を奥に置いて「見せ筋」に、そして本命の四合瓶を「売り筋」にしておる。
案の定、積極的な試飲を受けつつ、観光客が数本単位で一合瓶の方を土産用と自分用に組み合わせて、かなりの本数を買っている。そして同封するリーフレットにはメーカー直販のサイトへ誘導。
これはブランディングに欠かせない、典型的な「トライアル・リピート・モデル」。これをほとんどの蔵が実践しているとは!?
このカサマ、酒の全体的な各蔵の総合力は宮城が最強と心得ておりますが、もともと酒呑みのおっさんどもは兎も角、若い世代や女子の皆さんが、妙に新潟の酒に詳しくて愛好するのは、こんな切磋琢磨と努力が背景にあったわけです。
一番自信があって(高額で)オススメの酒は一合瓶を用意する。
「一合瓶はコスト高だし面倒臭いし客単価が下がるからやらない、やっても二線級の。」とか言っている宮城と真逆ではありませんか。。。
これがいわゆるマーケティングの差というやつか・・・。
いやぁ、仕事を完全にオフにして新潟に遊びにきたお陰で、仕事の参考になったなぁ。(注意・あくまで今回の目的は、日本海に夕日を見に行くことです)
今回買ったサンプル、経費で出していいですかね?
【補足】
カサマは東京在住時代、歓心を得ようという邪な感情により、仙台から東京に帰る際(当時概ね月1回仙台・東京を往復していた)に日本酒好きな女性の皆さんに何本か日本酒をお土産に買おうと目論んだことがあるのですよ。
ところが、四合瓶ですら3本も持つと2kgを超え、しかも割れ物ということで、とにかく日本酒の輸送が極めて困難。
というか、いくら「日本酒が好き」と言っても4合瓶を短期間で消費できる女性はよほどの酒豪で、その結果、無難に萩の月や笹かまぼこを手土産にせざるを得なかったのです。
すなわち、カサマが結婚できなかったのは酒造メーカーがこうした市場ニーズに沿った商品開発を行わなかったためであり、これに関してカサマは単にマーケティング戦略上の瑕疵を指摘するにとどまらず、断固として人権問題と認識して正式な抗議を(以下略)
これを代替するのはもしかしたらワンカップなのかもしれませんが、残念ながらワンカップが常磐線で夕方に満員にもかかわらず空けて飲み干して咆哮するオヤジ達の陰謀によりイメージが悪く、ナンパのツールとして活用するには不適切。
しかし、あれから8年あまり過ぎ、少しずつ一合瓶が普及しはじめ、今や東京では一合瓶専門店が現れるなど、人権問題の解決の兆しが見られるのです。
所狭しと集まった、全国の一合瓶たち。
ところが、宮城のお酒は一ノ蔵さんと浦霞さん以外に都内で流通している一合瓶ないらしく、むしろ西日本の地域よりも存在感が薄い。多く目に付くのは新潟と長野のお酒で、この売場だけ見たら、宮城県が2017年の全国新酒鑑評会にて出品23製造場のうち21製造場が入賞、しかもその20製造場が金賞を受賞という、金賞入賞率91%という驚異の日本酒品質県だということに気づきようがありません。(参考:福島45銘柄中金賞22、新潟70銘柄中14、長野59銘柄中10)
(ほんとうは)圧倒的ではないか、我が軍は!
しかし、しょせんはそうした事実を単なる情報発信ではなく実物として飲めるようなインフラ整備が行われなければ、実際に購買には結びつきようがありません。この一合瓶コーナーには外国人と女性ばかりがおり、最初からオッサン酒豪はアウト・オブ・眼中になっていて、なるほど、こうしたところからビギナー教育が始まっているのだ、と痛感するのでした。
今からでも遅くはないから、宮城の酒蔵の皆様には、一人の宮城県民の人生を助けると思って、是非とも本気モードで一合瓶の企画を推し進めて頂きたいと、カサマは心の底より意見具申するのであります。