東日本大震災前、仙台市の沿岸の貞山堀沿いにはかつて仙台亘理自転車道という長大な自転車道があったですよ。
岩切から入って海岸線沿いの松林をひたすら走り、途中乗馬クラブやら閖上のサイクルセンターまで。さすがにそこから亘理まで行くと帰れないので、閖上から名取川&広瀬川を遡上して、当時住んでいた北山まで、およそ50km。松林の中はほとんど走る者もおらず、海の音と自転車が風を切る音だけの、都市の空間として不思議な場所。カサマは学生時代から社会人に至るまで、体力錬成の一端で何度も走っていたものです。
が、2011年、例のアレで沿岸部の自転車道は完全崩壊!
5年間ほとんど復旧しなかったのですが、このたび仙台市内の沿岸部の約半分が復活。そこで見たのは、政令指定都市のメトロポリスの沿岸部とは思えない、美しくも異常な光景が広がっていたのでした。
場所: 荒浜海岸 2017年3月12日 13:32
【完全に一致】
ああ、どこかで見たことのある風景だと思ったら、ナウシカの「清浄の地」だ。
昨日は仕事もせずに、ひたすら自転車で閖上から荒浜まで。
仙台市の沿岸部は居住が禁じられ、あたかも禁忌の地のごとく、人の姿が殆どない「清浄の地」。
植物と動物の再生と、奥には巨大な光り輝く防潮堤。20世紀の人類が建造した自転車道の橋の跡が、辛うじて残る、現実離れした世界の果ての風景。
だがここも明らかに仙台の地。
この「重要な日付」でも、人っ子ひとりおらず。風の音しかなく、この空間に人類は自分しか存在しないような、寂寥感。
もっと地元の人間は、この景色を目に焼き付けておくべきだと思うんですね。
この空間に身を置き、感じることで、この地の、或いは人類の行く末を考える、貴重なひと時になります。
<補足>
驚くべきコトに、かつてはこの貞山堀沿いはかなり巨大な松林の中だったので、こんなに視界は開けておらず、むしろ森の中を走っているような感じだったんですね。それが津波でご覧の通り一掃されてしまいました。
一方、かつてのサイクリング道は一部修復が続いており、開けた視界を西側に転じると、以前は絶対見えなかった都心のビル群などが見えたりします。
かつての松林再生のための柵が、永遠と続く先に都市群が見えるこの風景も異様。
復元されつつある南北を貫くサイクリングロードの上から、東と右では全く違う風景が広がります。
元々仙台の沿岸部は、荒浜地区を除くと集落が皆無で、一種の「禁忌の地」のように都市から隔離されていたんですね。日本の大都市が海に面して発展しているのとは、明らかに違う。何かこう、「境界線上にいる」感がものすごく感じられるスポット。
自動車も入れないし、近くに公共交通機関もないため徒歩でも行きにくい。自転車乗りのみが体感できる境界世界。ココを走っていると、「ああ自分はリアル風の谷のナウシカの世界に来てしまったんだ」と嘆息しながらも、一方で震災をきっかけに拡がった自分のシゴトを考え、「うだつのあがらねぇ平民出にやっと巡って来た幸運か、それとも破滅の罠か。」(クロトワ)とリアルに考える自分に驚きあきれる、いとおかし候。