ここ2年、6月前半に大学院時代の同窓会があるのに合わせ、九州・四国方面の視察旅行を兼ねた「バカンス」を決行しております。
昨年は熊本県黒川温泉、大分県由布院、高知県馬路村。そして今年は最近様々なビジネス雑誌などで近年話題になっている徳島県「神山町」と「上勝町」を偵察。
その偵察情報を密かにFacebook上にアップしています。
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June 7 2014
一昨日、徳島県神山町に、レンタカー「るくしおん号」を借りて高松から行ってみました。
神山町は「山奥の集落なのに」という枕詞で、
「首都圏の起業のサテライトオフィスが増えて活性化している」
「現代アートのプロジェクトが成功して活性化している」
「アーティストや起業家が古民家に移り住んで活性化している」
「民間主体の環境保全の元祖で、街全体が活性化している」
「外国人が住み始めたり国際化により活性化している」
等々、見る人の立場によって、様々な「活性化」の解釈がなされているですよ。
しかし、昨日マスコミなどでも話題の「キーパーソン」とも言われる大南氏の話を聞いたところ、どうも世間で言われているほど単純ではなかったとよ。
以下、コメントとして備忘録を順次アップするですので、街づくりとか戦略論とかに興味のある方、暇つぶしにでも。
1.重層的・複合的
「サテライトオフィス」も「現代アート」も「古民家」も「起業家」も「環境」も「外国人」も、全部一つの文脈上にあって、ひとつだけで成り立っているわけではない。
表面だけ、一部分だけ真似ても、あまり意味がなさそうです。
むしろ、「手法」を学ぶというより、以下に記述する「考え方」の方が参考になりました。
2.優先順位づけと文脈
しかし、ある一時期は集中的に取り組まれたもので、ある文脈を元に、順番に始まっている。
神山の場合は
・(驚くべきことに)「国際化」が一番最初で、
・海外の人が来ても恥ずかしくないよう「環境保全」
・次に海外アーティストの「アート・イン・レジデンス」、
・技能を持った人なら移住可能なのがアーティスト見て学習
働き手・起業家ターゲットの逆指名「ワーク・イン・レジデンス」
・古民家はアーティストとか起業家受けるね。「サテライトオフィス」
3.若者主体の長期間の取り組み
上の流れを当時30代の人間がはじめ、突然有名になったが、実際には25年かかった。あせって全部同時多発進行しがちな被災地の「復興コミュニティカフェ」系のみなさんは要注意です。
ここは東京じゃない。
「地方の時間の流れ」を知る、ある程度職業人として経験のある地元の30代が、その土地の時間の流れでじっくりやる必要。
(たぶん、「発起人」は20代でも40代でもダメかも)
ただ、今風(?)にマネジメント理論を駆使(例えば「ロードマップ」とか)、もっと短い時間でできるかも?
4.小さな成功体験の発端と共有
神山の場合、発端は1941年にアメリカから寄贈された、有名な「青い目の人形」のアメリカへの1991年の「里帰り」運動が発端。
自腹で(当時30万円の渡航費も!)やった村の30代の若者が、それを機会に「国際化」を謳い始め、今に続く一連の「神山モデル」のベース体験となっている。
「伏線」という意味では、実に70年の歴史になるわけですな。
人工的にこうしたモデルを構築しようとする時、もしかして街づくりの第一歩は「伏線探し」なのかも?
5.複数のリーダーシップの存在
しかもその運動は、街の当時渡米した共有体験を持つ5人の若者が、いまもそれぞれのプロジェクトでリーダーシップと責任をもって分担している。
マスコミは分かりやすくするために「一人の英雄」を作りがちだが、要注意というわけです。
6.資源の戦略配置の発想
ポートフォリオ・マネジメント・ストラテジー(PMS)と勝手に命名。
民間傭兵部隊(Praivate Military Service)みたいでカッコイイでしょう?
それはともかく、最大の神山モデルの特徴は、「えこひいき」ですな。
古民家移住は「不公平」にやっていて、旧商店街の空き店舗を埋める際は、「神山に必要な人を募集」する。
例えば
「神山にはパン屋がないからパン職人募集。その代わりいい感じの古民家兼店舗を格安で提供」
というような感じ。
村人から「ポートフォリオ」という単語が出たのに驚きましたが、アーティストを呼んだのも、別に集落を現代アートで埋め尽くすのが目的ではなくて、「アーティスト周りは起業家とか建築家とか変な連中が多いので、多様な人材に神山を注目してもらうため」という、実に「戦略的」な発想。
「多様性は戦略的に作り出す」という、基本ですな。
ほっておくと、世の中のものはどんどん均一化するので。
限界集落なら、「無職の高齢者に住民が均一化する」というワケです。
(だから女性の起業家を集中的に支援するとかの「えこひいき」は戦略論的には正しい)
7.都市と農村の役割分担、強みのシナジー
以上のような戦略要件が決まったうえで、神山の人々が「都市と神山の強み・弱みを把握」していました。
これ、「最初にSWOT分析」をよくやっちゃうんですが、神山の方々はMBAホルダーばりに「戦略(仮説)決定してから、改めて都市(徳島市)と神山(山村)のSWOT」を考えておりました。
そうなると、とーほぐ人の感覚的には「徳島市街地から40分」という全然「僻地」ではない(というか、普通にコンビニや信号がある)その神山の特性を、イロイロと料理する術が見えてきた、という感じでしょうか。
特に「6」に関しては、どうせ後で空室が目立って苦労するであろう被災地域の復興住宅や復興商店街で、遠からずこの手法を使わざるを得なくなるはずなので、今からよくよく研究しておいたほうが良いでしょう。
それを行うために、様々なHRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)が行われており、これこそが最大のノウハウですね。
え、それが知りたい?
はっはっは。
もっと詳しい内容を知りたい方は、私に講演依頼をしたまえ。
タダではやらんよ?
最高級の特保コーラ2本分ぐらいは必要なので、覚悟するように。
(書くのが面倒なので、あとは口頭で・・・)
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最近よく「とーほぐは課題先進地」ということで、その解決を通して日本の課題解決の指針にしよう!という心意気をよく聞きます。
しかし、今後被災地で争点となるであろう例えば「国際化」や「移住者対策」について、実は四国では30年以上様々な試行錯誤が行われている。まだまだ我々とーほぐ人は、外の世界を思い込みや雑誌などの二次情報ではなく、自ら学びに、自ら一時情報を外に取りに行く気合が必要ですな。
私が毎年6日月に四国に行って視察料を所属組合の経費にしているのは、決して香川県高松市に住む甥っ子の顔を見たいからだけではないのです。