吾輩は猫ではない。
久慈琥珀博物館長である。
夏毛に変わる時分はむずがゆい。
この館には躰を擦り付けるに丁度良い柱というものがなく
砂場もなく、つるつるの床も、ふかふかの床も役に立たない。
或る日、シャチョーと呼ばれるニッタ某なる御仁の靴に
偶然ぶつかったところ、瞬時に背中の静電気失せ、
極めて心地よく冬毛を落とせることに気が付いた。
御仁は概ね朝しか館に来ないので、試しに学芸員女子の
パンプスで試してみたが、小さく・革薄く、某の靴に及ぶべくもない。
以来、某の通り路で待ち構えると、破顔一笑、どうぞと手招きし、
吾輩の放電・脱毛の儀を有難く受けるのである。
冬毛一巡。
涼しき夏毛の候、皆様いかがお過ごしか。
女子曰く、ニッタ某は、最近ブルーが懐かないとボヤくそう。
おかしいな、今まで俺だけに挨拶しに来たのに。
すごいですね、やっぱり猫もボスが誰か分かるんですね。
そうかなぁ、とニッタさん嬉しいそう。
今度、ブルーが好きそうな靴を買ってみます。
せっかくの新品に申し訳ないのだが、
吾輩は、あの馴染んだ靴がお気に入りなのである。
※野良出身の気高さ。うっかり荷台で昼寝して田園調布から久慈に着いたらしい。
四方山雑記帳
東北・宮城・仙台マーケットの小ネタ小ばなし
BLUE EYES
この記事を書いた人
大志田 典明(ブレイントラスト&カンパニー株式会社)
マーケティングプロデューサー。
東北地域の中小企業支援をライフワークに、農・商・工の各分野で強い地域ブランドづくりに努める。
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