多分、日本で一番心地よい、梅雨入り前の初夏の宵。
その名も地獄極楽小路を隔てて、右は旧監獄・左は料亭と来れば
新潟・西大畑町の行形亭。
二千坪の庭に至る門から離れの小径には、はんなり薫る白藤棚
が趣を湛えます。
そのナリが、イキだった旦那衆にちなみ、創業・元禄からの屋号
イキナリヤ。それをそのまま苗字にした行形さんは全国に五家族。
そこに、ふつうのOLさんから嫁いだ若女将が、お手製の梅干しを
味見にと出してくれます。
見ごとに大振りでふっくらした佳い塩梅は藤五郎?
今年も若い板前さんが二人入りました。ウチでは入社式と言わず
入学式といって、ご両親もお招きして食事会をするんですが、近
頃は、ご両親の御歳が自分たちより若くてビックリします。
をどり終え、左で酌するあやめ姐さん、思わず手を止め同感。
最近、転勤してくる支店長さんたちも、自分より若いのよ。
今席を仕切りいただいた、敬愛する新潟の仕事人・ミヤシタさんが
静かに一献傾けて、ひとこと。
若女将が嫁いで十年、あやめ姐さんが芸の道に入って十二年、
ってことですねぇ。
御座敷と芸、女将さんと姐さん。
セットでないと続けられない花柳の街に、次の世代が年・季を重ね
て継承されている新潟。
地域文化の持続という、街づくりのもう一つの大切さを、民間が支え
る粋に乾杯です。
※行形亭、なきが如しの一枚引き大ガラス越しに眺める坪庭。夏場
には一献前に湯浴みできる離れ風呂もあります。浴衣で涼む柳都
の夜を是非。
四方山雑記帳
東北・宮城・仙台マーケットの小ネタ小ばなし
いきなりさん
この記事を書いた人
大志田 典明(ブレイントラスト&カンパニー株式会社)
マーケティングプロデューサー。
東北地域の中小企業支援をライフワークに、農・商・工の各分野で強い地域ブランドづくりに努める。
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