毎年恒例の西日本への視察旅行。今年は久々の四国上陸へ。その驚くべき景色と仕組みについて、Facebookにて報告しているのでした。
場所: 東祖谷
10月21日
【中山間地限界集落の闘い-その1-】
最近、「限界集落の古民家インバウンド観光」で話題の徳島県祖谷(いや)渓の落合集落を訪れるなど。
ご案内いただきました、三好市観光課の中西様、ありがとうございます!
このカサマ、日本全国様々なところを廻りましたが、まさに「息を呑む」風景に出会ったのは、本当に久しぶり。
「日本のマチュピチュ」と例えられますが、アレックス・カー氏は中国三峡の山水画の世界を探した末に、ここにたどり着いたとか。
15年ほど前、三峡ダムが完成前に行きましたが、その両岸の高低差がダム貯水前で約250m。
この落合集落は、最高地の住居と下層の集落のその標高差、実に300m。
単純な沢と山頂の標高差は400mを超えます。
今や中国三峡は、三峡ダムの完成により水位が100m以上上がっており、当時の風景は見られません。しかし、その往時の迫力を超える場所が、まさか日本にあるとは。。。
ネットなどで得られる写真では、この迫力は全く伝わっておらぬ。
マチュピチュや三峡というより、建物が急斜面にへばりついている様子は、むしろアニメ「天空の城ラピュタ」に出てきた鉱山の街「スラッグ渓谷」にイメージは近い。
どおりて日本の秘境の限界集落に外国人観光客が訪れるわけだ。。。
「限界集落の古民家インバウンド観光」は、こうした世界クラスの風景資源があるからこその部分も大きい。
しかし一方で、東北の多くの「村残し」ミッションに非常に参考になる知見もまた、得られました。
それは「その2」で続きを。
(補足)
結局「その2」は下書き原稿を作ったもののFacebookに載せるタイミングを逸してしまったのですが、今回はその書きかけを多様手を入れて転載。
【中山間地限界集落の闘い-その2-】
「限界集落の古民家インバウンド観光」であるとこらの徳島県祖谷(いや)の落合集落。
いくつか参考になった知見を。
(1)圧倒的な風景資源
「その1」で述べた通り。四国にこのような圧倒的な迫力の風景があるとは。写真や映像ではなかなか伝わらない、巨大なものに素直に感じ入る人間の本能に訴えるというか。宮城でいうなら、蔵王のお釜というか。前提として他の地域に比して差別性のある資源があるのは強い。
なお、近年では地域住民や自治体担当者のモチベーションが上がり、屋根の色などの統一や、ガイドレールの塗装など、風景をさらに磨いて、地域の価値を上げる努力が継続中とのこと。
(2)最初から外国人目線
外は往時の雰囲気を「適切に演出して再現(再生ではない)」し、中は清潔で便利な現代技術の積極導入、という方針があったそうで、アレックス・カー氏の「演出」は徹底しております。ようは、外国人が思い描く「想像上の美しい日本」の具現化。20年以上前に、大きな道路を通す構想が持ち上がった際、「ウチの前は絶対通すな」と行政に伝えていたらしい。
往々にして、日本人が思い描く「日本的なもの」と、外国人が期待する「日本的なもの」にはズレがあるもの。特にインバウンド観光の現場では、結構「日本的なものの押しつけ」もよく見るので、一種の顧客指向の演出は意外に希少だったりするのでした。
(3)古民家無償貸与のスキーム
古民家は住民から市に「無償貸与」されたもののよう。代わりに、年10日間の使用権を住民が持つそうです(お盆、正月等)。
市として(祖谷として)空き家となった家の中でも「残すべき」ものを選別し、リノベを通して地域の価値が上がる。元住人・親族等は、無人となった空き家を持ち出しなしてリノベされ、素晴らしい建物に生まれ変わって維持され、資産価値が上がる。
放っておけば消滅する限界集落だからできるスキーム。
(4)「手のかからない」方法の追求
全部で8棟の古民家は、個別に管理人がいるわけではなく、電気的な鍵を持たされて自分で向かって、鍵を開けて入ります。
食事の提供はなく、自分たちで食料を持って行く必要があります。そのかわりキッチンはHIクッキングヒーターが導入された、最新鋭のもの。
「元々人がいない」という環境を逆手に、今後の旅行・宿泊業の「省力化」の潮流を、ある意味で最初から極限まで追求していることに・・・。
(5)組織開発
NPO法人ちいおりトラストと株式会社ちいおりアライアンスの2つの組織体を駆使。
これもまた、放っておくと消滅する限界集落だからできる手法。
すでに消滅が確定的な、「ゆい」のようなかつての地域のコミュニティ・インフラの代わりに、NPOや株式会社などの現代的な仕組みをインストールするのは、多くの限界集落での課題ですが、その一つの手法であるなと。イロイロ課題が言われている「地域おこし協力隊」の受け皿(移住含む)にもなっており、今後の展開は一種の地域商社になって行くのではなかろうかと思ったのでした。
(6)当時の50代の活躍
10年以上前、当時の50代の地域住民が(他地域でもよく見受けられる)地域特産品作りなどから、徐々に意識変革やノウハウ構築につながったそうで。その方々が、ある意味で自分がそのまま高齢者になったときに住めるように地域を「改造」した形。「自分事」としてリアルに考える人々が、自分たちにない要素を積極的に外部に求め、できることを役割分担する。
こうした「僻地の村残し」活動のターゲットは、高齢者や「若者」などではなく、実はそのままその地に残るであろう「50代」か?
逆に、60代ぐらいの方々が今から頑張り始めている地域は、すでに手遅れの可能性も。。。
(補足)
「地域残し」は、地域の実情(とりわけ人材的なところ)が全く違うため、人によっては「法則性なんかないから、事例研究など不要」「オリジナリティが重要なんだよ!」という方に会ったことがあるですよ。でも、実際にはこの「地域残し」は、ある意味で近代以降の日本が初めて直面する問題なわけで、これから様々な事例や知識、知見が蓄積され、処方箋が開発されていくんだと思うんですね。その意味では、今は様々な地域を視察し、何かしらの法則を見いだすという、もがき苦しむ時期なのだ、と思った次第。
ところで、この後、せっかくだからこの古民家に宿泊しようと思うも、2週間前までにWEB経由で予約しなければいけないルールになっておりました。何しろ業務が見切られたのが12日前で、視察対応はわざわざ役場の方がマンツーマンで柔軟に対応頂いたものの、宿泊できず。
結局20km離れたキャンプ場に逗留することになったのですが、そこでは・・・
笠間 建さんが写真4件を追加しました -- 場所: 祖谷渓
10月20日
【トモダチ作戦】
夕食に「それいけ!アンパンマン キャラメルコーン」を食すなど。
ひ、ひもじい。。
な、なぜこんなことに・・・
日本三大秘境の徳島県祖谷渓の「限界集落の古民家インバウンド観光ビジネス」の里、落合集落を視察。
その後、結局古民家宿には泊まれず、20km離れた山中で台風の影響の雨の中、キャンプ場のバンガローに独り退避するなど、いとおかし。
もとより車中泊覚悟ゆえ、それよりは。
森の深く吉野川の水の音が暗闇で響くここは、寂寥感甚だしき。
お、恐ろしい。。。
たがアンパンマン・キャラメルコーンのおかげで、勇気が湧いてきたよ!
タケルくん、勇気をあげる!
自分を奮いたたせるため、人が周りにいないことをいいことに、オペラ調でラピュタ語を交えながら、下記のごとく詠唱せり。
おお、アンパンマン
優しき君よ
愛と勇気の二人だけを友とする、孤独な戦士よ
そなたは私と同類
孤独な男
我が戦友
左様に恐れず
皆のために
我に力を、光よ甦れ
リーテ・ラドバリタ・ウルス・アリヤロス・バル・ネトリール
愛と勇気しか、友達いない。
(1時間後)
これが最後のコアラのマーチだ・・・。
神のご加護を・・・!
(2時間後)
お、俺は夢でも見ているのか・・・?
山中のキャンプ場に、コイン式シャワーが・・・。
百円で3分の極楽。
なんかマッチ売りの少女の気分だぜ・・・。
(2時間半後)
ふいーっ、やっぱ文明の利器ってやつは最高だよ。
思わず200円、6分間もシャワーを浴びちまったぜ。
宇宙ではやれるときにやる、次にいつそれができるかわからないから、って、メーテルも言っていたしな。
(補足)
視察は計画的に・・・