毎年2月にビッグサイトで開催されるスーパー・マーケット・トレードショー。
50年の歴史を誇り、世界的にもその集まる商材の品質と多様性で知られるこの見本市ですが、それは半世紀にもわたり熾烈な競争を通して、しかし地域商材がお互いに影響しつつ高めあってきた、「終わりなき最終決戦」。
そこには生産者の思いはおろか、消費者のニーズすら超えた、人間の意志の集合体でありながら、人間には制御できない歴史創造の物語の現場でもあるのでした。
14 February at 10:08
【終わりなき最終決戦 SMTD所見4】
スーパーマーケット・トレードショーで発表された今年のお弁当・お惣菜コンテスト。
今年の栄えあるお弁当部門の最優秀グランプリは「はらこ飯」ッ!優秀賞も「牛タン食べ比べ重」ッ!
挙げ句の果てにスイーツ部門の最優秀グランプリも「ずんだおはぎ」だッ!
すごいぜ、宮城ッ!
これらの商品は、絶賛「関東新潟地区」のスーパーの名物として発売中ッ!!!!
・・・ん・・・あれ?
はらこ飯も牛タンもずんだも宮城が「宗主国」と思ったが、宮城のものとして売られていない?
生産者の方や飲食店の方、またそれらを応援する方々の「想い」とは別世界で、別の場所で、時にはグローバルに市場が生まれ、他の者が利益を得ることができるダイナミズム。
それが食品・飲食業界。
おそらく次に他地域のターゲットにされるのは「せり鍋」・・・。
資本主義市場、とりわけ日本の食品業界の当たり前の現実。
自らの価値観を大切にしたいのなら、逆にマーケティング、ブランディングなどの戦略行動だけが、それに対抗し 、アイデンティティを護りうる唯一の手段。。
<追記>
震災前から続く、名取地域の一部の生産者さんによる地道な「セリ鍋」普及の取り組み。
震災後にその応援団の人々や飲食店の人々の努力が実り、一気に仙台市内でブレーク。カサマのFacebookのタイムライン上には12月ごろからセリ鍋の写真が乱舞し、まるでセリ鍋を食べざる者、センダイジンにあらずの祇園精舎の鐘の音ベイベーな状況。今や全国放送などの影響もあり、全国的に知られつつあります。
しかし、それと同時に増えたのは、あそこは出汁が鴨じゃないから偽物とか、あれは秋田産のセリを使った紛い物とか、あれは岩沼の農家から買っているらしいから微妙とか、しまいにはあの店は「元祖」の名取のSさんからのセリを買うのに頭を下げなかったからダメとか、ナゾの自己認定型敵味方識別システムによるナゾの全方位戦闘。
なるほど、こうやって先の大戦(戊辰戦争)では我が仙台藩は勝手に自壊したんだなと、実に興味深く観察しているであります。
ぶっちゃけ、鍋にセリを入れただけの極めてシンプルであるがゆえ製法上差別性がなく、むしろどんな飲食店でも今ある設備で導入可能な、よく言えば懐の深い、別の言い方では敷居の低いメニューでありますから、来年には茨城県産のセリを主体に首都圏の多くの居酒屋のメニューや、成城石井やクイーンズ伊勢丹あたりに「セリ鍋セット」が置かれる未来がなんとなく思い浮かびます。
2年後のスーパーマーケット・トレードショーでは、宮城ではないスーパーのセリ鍋セットが「鍋部門」で最優秀賞に輝くでしょう。
また、もしカサマが今年、生産量2位の茨城県のセリ農家の皆さんよりマーケティング支援要請があれば、早速茨城県内で「セリ鍋的な風習」をブランドストーリー発掘と称して調査し、夏ごろにはHPで連載、情報発信。早速Wikipedeia先生に「セリ鍋」解説のページを設けるます。そして宮城よりも早く収穫が始まるので、秋あたりに「セリ鍋、始めました!」「茨城県産セリ鍋、あります!」ステッカーや提灯などのPOPを大量にチェーン飲食店に配布して先行する、みたいなことを言うかもしれません。
結局、「セリ鍋」のような複雑性が少なく、それでいてシンプルなネーミングの商材は、マーケティング理論でいうところの「普及速度」が典型的に早い商品になってしまう。そこから自らの価値を護ろうとするのなら、マーケティングの先にある「ブランディング」の手法を地道に駆使するしかないと、不肖カサマは意見具申するであります。
「セリ鍋」を仙台に普及した、あの情熱と努力と同じぐらいかけてですね。
悲しいけどこれ、戦争なのよね。