日本全国各地の神社には、それぞれに何がしかのご利益があって、
これを祈願するためにお参りする人が多いと思います。
「金運祈願」「合格祈願」「縁結び」「交通安全」等々、
神社毎、神様毎に、得意とする御利益は色々ありますが、
「安産祈願」というのも、大概の神社で御利益としてうたわれ、
専用の「お守り」が売られていたりしもます。
ちなみに「御利益」の「利益(りやく)」は、
元は仏教の用語だそうで、
「世のため、人のために善行を行った結果、仏様から得られる恵み」
が本来の意味。
なので、願うだけで叶うものではなく、
厳密に言えば、「神社の御利益」というのも、ちょっと違うらしいですが、
現在では、細かいことは言いっこ無し、と、いうことで。
話しがそれました。
「安産祈願」に御利益がある神社と言えば、「水天宮」が有名ですが、
その「水天宮」は、
源氏に敗れ、祖母の二位尼に抱かれ壇ノ浦に入水した安徳天皇と
その母(建礼門院・平徳子)及び平家一門を弔うために、
壇ノ浦を生き延びた按察使局伊勢(あぜちのつぼねいせ)が、
祠を立てたことに由来しています。
要は、幼子を育てること、守ることができなった、その裏返しで、
その祭神である、二位の尼や建礼門院が「安産守護」という神徳を発揮してくれる
という図式です。
似た話としては、「日本武尊(やまとたけるのみこと)」の身代わりとなって
海に身を沈めた「弟橘媛(おとたちばなひめ)」が、
安産守護となることを誓ってから身を投げたので、
「弟橘媛」を祀る神社が「安産の神」になっている例もあるようです。
また、「出産は潮の干潮に関係している」ことから、
御祭神が「鹽土老翁神(しおつちおじのかみ)」という海のカミサマである
名古屋の鹽竈神社は、安産祈願の神社として、当地では有名だそうです。
鹽竈神社と言えば、もちろんその総本宮は、宮城の塩釜にある「鹽竈神社」。
名古屋の鹽竈神社も、ここから分霊されて創建されたものです。
でも、その本家の鹽竈神社では、もちろん同じ「鹽土老翁神」を別宮にお祀りしていますが、
それほどの「安産推し」はしてないんですけどね。
さらに、安産のお守りと言えば、
子沢山でお産が軽いと言われる「犬」にあやかったお守りが有名ですよね。
犬(戌)の人形も安産のお守りだったり、犬印妊婦帯はあまりにも有名でした。
さらにさらに、「安産箒」(あんざんほうき)と言うものもあります。
古来、箒には「払い、浄める・清める」という意味があり、
元々、神具としても使われていたので、
「妊婦のお腹を新しい箒で掃くと安産になる」という民間信仰もあって、
妊婦の枕元に新品の箒を置いたり、
手のひらサイズの小さな箒をお守り代わりに身に着けたり、
という風習もあるそうです。
お守りとしての「安産箒」は、ネットでも購入できます。
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で、何故、唐突に「安産」の話を始めたかと言えば、
前回のブログで「釜石大観音」の話を書いたのですが、
その釜石大観音に行った後、近くにある「鉄の歴史館」という施設にも
ちらっと寄ったのですが、その展示物の中で、
「安産の守護神」というものがあったのです。
館内の展示物なので、その画像をそのままここに出せませんが、
展示されていたものを絵で描くとこんな感じ。
これは釜石の橋野で製鉄高炉が操業した時に、
その高炉から出た初湯(はつゆ)=初出銑(はつしゅっせん)を
橋野高炉を築造した職人のうちの一人であった川崎家の人が、
代々「安産の守護神」としていたというものでした。
「初湯」とは、
高炉の中で溶けた鉄が、高炉の下から出てきた時の溶けた鉄の流れで、
それが固まってできた細長いウネウネとした、
上図のような約1m程の棒状の鉄を「安産の守護神」としたんだそうです。
日本の製鉄の始まりですし、相当な苦労を重ねて高炉を建設し、
そこから無事、鉄が出てきた、つまり生まれてきた時は、
それはもう、大変な感動と喜びだったでしょうから、
これを「安産の守護神」としたのも、なんとなくではありますが、
うなずけなくもありません。
ただ、ですね、その説明文には、
「川崎家ではこれを代々安産の守護神(あくま)としている。」
と、書いてあったんですよ。
この「あくま」というのが、何故「あくま」と言うのかが気になって、
色々調べたのですが、結局、現時点でわからなかったんですよ。
「鉄の歴史館」で聞けばよかったんでしょうが、
時間がなくて、そのまま帰ってきてしまったもので。
と言うわけで、その流れで、「安産」の話になった、と。
いずれ、時間ができたら、この件の確認をしたいです。
どなたかご存じの方がいたら、ぜひ、教えてほしいです。
ちなみに、これが、「鉄の歴史館」
釜石大観音の近くですので、もし、釜石を訪問することがあれば、
ぜひ、お立ち寄りを。
(あくま)の理由をぜひ聞いてきて、私に教えてください。