事例
1 ハード・ソフト両面から
老舗工業団地を高度化
仙台印刷工業団地協同組合様へのサポート
1963年(昭和38年)に設立された仙台印刷工業団地協同組合(以下仙台印刷団地)は、高度経済成長期を背景に中小企業の「集団化」の一環として、仙台市東部の六丁の目に新たに27社で事業協同組合を設立して工業団地を形成。以後半世紀以上にわたり、ニーズへ変化の柔軟に対応しながら様々な事業を展開してきた。
そして21世紀に入り、「印刷」の役割はさらに多様化。単純に紙にインクを載せていれば良いという時代は過ぎ去り、デジタル化社会への対応やマーケティングノウハウの蓄積などが、印刷業として取り組む重要な戦略として取り上げられるようになった。そこで従来の事業協同組合の枠にとらわれない、新たな構想に取り組むに至った。
大学と共に作ったビジョンを具体的な形に
きっかけは東北大学との産学連携だった。2008年に仙台印刷団地と東北大学大学院経済学研究科・地域イノベーション研究センターと連携し、組合の今後のビジョンづくりが始動した。かつての工業団地は、加盟する企業同士で共同工場を作って生産設備を共有したり、共同で資金調達を行うことで財務基盤の強靱化を図ったり、中小企業が単独では出来ない様々な共同事業を展開してきた。また、工業団地内で各社強みを生かし合った生産体制を構築していくことで生産効率を高めるなど、様々な役割を担ってきた。しかし近年、「印刷」に求められる内容が多様化し、印刷業そのものの役割が変化しつつあった。特に印刷業の付加価値を高めるマーケティング機能が強く求められ始めていたのである。いわゆる「ソリューションビジネス」を展開していく上で、マーケティングは欠かせない。印刷業の場合、官公庁を始め民間企業や個人商店に至るまで幅広い顧客層を有している為、顧客を分析しアドバイスする機能が弱いという弱点があった。単純に販促のチラシを作って納める、というビジネスの在り方を根本的に見直す時期に来ていたのだ。
東北大学とのビジョンづくりでは、「印刷団地のクラスター構想」という形でまとめられた。クラスターとは「ブドウの房」を意味しており、印刷機能を中心とした様々なソフト、ノウハウがブドウの房の如く集積し、新たな価値を生み出す「ハブ」としての役割を仙台印刷団地が持つということである。
そして次のステップで重要なことは、そのビジョンをどのように具現化していくか、である。エリアマークでは、仙台印刷団地からの要請を受け、工業団地のなかに共同のマーケティング支援センターである「ビジネスデザインセンター(以下BDC)」構築を支援。ここでは「マーケティング」と「デザイン」を切り口に東北の様々な企業のビジネスの高付加価値化支援を行う。エリアマークでは、BDCの運営全般や支援人材の育成をサポートし、仙台印刷団地の高付加価値化を継続的に支援している。
六丁の目駅前の土地の高度利用を支援
時を同じくし、仙台印刷団地が位置する六丁の目地区に、地下鉄東西線計画が進行していた。これは地下鉄により、大学や商業エリアなど仙台の街の様々なクラスターと物理的に接続されることを意味した。印刷団地のソフト事業であるBDC事業もこの地下鉄開業を目標に計画が進んでいたが、一方で仙台印刷団地が所有する地下鉄六丁の目駅前の土地約3,500坪の高度利用も大きな課題となっていた。
2011年3月の東日本大震災を契機に土地活用に大きな動きが出る。被災者の住宅である復興公営住宅の建設打診が仙台市よりあったのである。かつては住宅のない郊外に形成された工業団地が、職住商工が一体となった「まちづくり」の観点から、設立から半世紀を経てその存在意義を見直す機会が訪れたのである。
仙台印刷団地では、エリアマークの支援のもと内部で検討を重ね、復興公営住宅プロジェクトに着手することとなった。その後も産業道路に面した区画へ商業施設の誘致、保育所の誘致、従業員向けの自走式立体駐車場の建設など、全体的な土地の高度利用を長期にわたり支援。仙台印刷団地の収益向上にも大きく貢献した。
仙台印刷団地の針生英一理事長は言う。「ビジョンがあっても、それを具現化するのは困難が付きまとうものです。まちづくりといっても、ソフト・ハード両面が必要不可欠であり、両方の専門性が高い機関はほとんど見当たりません。エリアマークは地域を知り尽くした専門家集団です。エリアマークというパートナーがいなかったら、我々のビジョンも絵空事になっていたかもしれません。」
10年を超える長期にわたるプロジェクト。それはあたかも工業団地のブランディング活動とも言える。こうして仙台印刷団地クラスター構想は、ハードとソフトの両輪から支援を行った当組合の代表的な取り組みとなったのである。
- 産学連携により構想された戦略を、エリアマークの専門家集団が具現化し、人材育成を含めサポート
- 「地下鉄東西線開業」という大きなマイルストーンを中心に添え、その前後10 年間の長期で支援
- 予期せぬ東日本大震災などの影響も、「復興公営住宅」建設などを構想に盛り込むことで柔軟に対処
仙台エリアマークは民間支援組織ならではのマルチプル&フレックスな編成が可能です。
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