去る1月27日に、
「仙台はなもく七三会 30周年記念講演」として、
「ILC計画~計画概要・現況、新たな地域創生を目指して~」
と題した、ILC戦略会議・東北ILC準備室の山下先生の
ご講演を拝聴する機会がありました。
ILC(国際リニアコライダー)の役割や意義、
計画概要や今後の展望等々、
大変多岐にわたり、しかしながらわかりやすくお話していただき、
とても勉強になりました。
その中で、ILC完成のあかつきに、世界中から集まる研究者の方々、
つまりILCを使用する人=ユーザー及びそのご家族、
関係者の方々の日本での生活環境整備に関してのお話が出ました。
現況の計画では、
ILCに関係して直接的に増加する人口は、
建設期間内で、最大8000人程度(工事関係者含む)
完成後の運用期間内で、6000人前後、
この内、半分強が外国人研究者とその家族と見込まれています。
もちろん、間接的な生活サポートも含めて必要となる、
もしくは集まってくる人口は更にあるでしょうし、
ILCは国際的な研究施設ですから、将来、連携施設や
民間企業が近くに進出することも考えられますが。
その3000人以上の外国人の内、
直接的にILCを使って研究をする研究者の方々は、
それこそストイックに没頭する方もいるでしょうし、
ILCでの研究自体が目的で来日されるのだとは思いますが、
当然に研究以外の日常の生活も、日本で過ごさなければなりません。
ましてや、同行される家族がいれば、
その配偶者や子供は、その「日常」こそをいかに過ごすか、
が、問題であるというお話でした。
お迎えする側の日本、地元の行政、住民、企業 等々としては、
色々と考えることが多岐にわたるなぁ、と。
どうしても、「ILC誘致」をベースにした、
「商売」という視点だけで見ていくと、
目が行き届かない点が多く出てしまうのではないかな、
等と考えつつも、一応、不動産が本業なので、
「空家の古民家をリノベーションして、研究者家族用の
住宅を提供したらいいよね。」
と、誰でも思いつく事を私も夢想してみましたが、
よくよく検討すると、
当たり前ながら、そう簡単にはいかないようで。
そもそも、「古民家」が残っている場所の立地を考えてみれば、
都市部から離れているものがほとんどですから、
・生活利便施設が近隣に少ない
・交通手段が限られる
・冬場の雪対策
・子供がいた場合の教育の問題
・言語的にサポートできる環境・人材が無い
・古い家屋を外国人が生活できるレベルにリノベするのには
結構な費用が掛かる→相場とかけ離れた賃料になる
等々、「日常生活」の利便性を考えれば、
簡単に乗り越えられる問題で無いコトがたくさんあります。
ちなみに、調べてみると、
ILCの検討用地に近いところで、
1000坪くらいの山林込の土地が付いた民家が、
100万円~300万円程度の価格で売りに出されたりはしています。
元がこのぐらい安いとはいえ、建物自体が古いので、
外国人研究者家族の使用に耐えるようにリノベするとなれば、
やはり千万単位で費用は掛かると思われ、
その上で、賃貸するとなると、やはりそれなりの賃料になってしまいます。
いくら環境が良い(日本の原風景を感じられる、とかの面で!?)とはいえ、
生活利便性が低い場所で、高い賃料を払う人は、
少数派だと思うのです。
それなりの「街」を形成しているところまで出れば、
それこそ「地方」であることもあり、
家具付きの新築アパートでも4万円台から借りることができますし、
一方、外国人子女を受け入れる学校の事を考えると、
仙台にメインの住居がないと難しいと言いう事もあります。
場所も時期も内容も違いはありますが、
外国人研究者・家族を対象とした住宅供給事例として、
青森県の六ケ所村での例では、
単身者向けの40㎡アパートで家賃は4.3万円/月、
175㎡ある4LDKの村営住宅は、当初16万円/月の家賃設定だったものを
最終的には12万円/月で入居してもらえた、というデータもありました。
ILC誘致によって、人が集まる、市場が生まれる、というのは、
間違いないのでしょうが、
その時に、そのユーザーの側に立って、よくよく考えないと、
道を間違うなぁ、と、つくづく感じました。
今後は、これを踏まえて、
「日本で仕事する外国人」から見た時に、
必要なモノ、コト、サービス、考え方、等々を検討し、
なにがしかの面でかかわれたらなぁ、と思っています。