「ニッキとハッカ」・・・って、並べて書くと昔の二人組歌手の芸名みたいなカンジが。
「祐子と弥生」とか「さくらと一郎」とか「内山田洋とクールファイブ」とか「リンリン・ランラン」とか。
いやいや、後半二人組じゃないし、「リンリン・ランラン」は間に「と」って入らないしで、全然近似性が無かったりもしますが、あくまでイメージの話です。
で、今回、そんな話とは全く関係ありませんが、ラジオで「ニッキ飴」の話をしていまして、そういえば「ニッキ」って何語?「ハッカ」も似たような語感で気になるなぁ・・・と思って調べてみた、という話です。
まず、「ニッキ」ですが、正式かどうかは別として日本語でした。
「ニッキ」=「シナモン」であることをご存じの方も多いと思いますが、これは和名(漢名も)「肉桂」と書かれるクスノキ科の樹木のことで、この樹木の樹皮を剥いて乾燥させたものを薬や香辛料としたものも、その名で呼ばれています。
中国から伝わった「肉桂」が音読みで「にくけい」と呼ばれ、「にくけい」→「にっけい」→「にっけ」→「にっき」=「ニッキ」となったので、そういう意味で日本語です。今でも地方では「ニッキ」ではなく「ニッケ」と呼ぶところもあるとか。
「桂」の字は、日本語では「かつら」と読みその名前の樹木を指しますが、元々の中国では「香りのする樹木」を指す言葉だったようで、「かつら(の木)」とは全然関係がなく、古くは「木犀」(モクセイ・日本では金木犀(キンモクセイ)が有名)類の樹木を差し、「肉桂」はソレ以前から独特の香りもあってこの字で表現されていたようです。
「ニッキ」=「肉桂」=「シナモン」は、エジプトのミイラ制作にも防腐剤として使われていた記録もあるそうで、とても古くからその薬効と香りが知られたものでした。
漢方薬では「桂皮(けいひ)」と呼ばれますが、まさしく「桂(けい)」の樹皮ですから、納得の名称です。
そんな歴史もあり、日本にもかなり昔から伝わっていたようです。
ちなみに「ミイラ」自体も漢方薬として使用されていたことが有ります。ちょっとゾッとしますが。
で、この「ミイラ」の語源になっているのがポルトガル語の「ミルラ」で、「ミルラ」は「没薬(もつやく)」の意味でした。「没薬」とは「ミルラの木」(和名は「没薬樹・もつやくじゅ」)からとれる樹脂を乾燥させた薬のことで、やはり防腐剤に使われたそうです。
「ハッカ」の方ですが、これもやっぱり日本語でした。
漢字では「薄荷」と書き、シソ科ハッカ属の植物です。「ニッキ」が「木」で「ハッカ」は「草」からできるということですね。
いわゆるハーブの内「ミント」と言われるは、広義では全て「ハッカ」なわけです。
あのスーッとする成分は、最近では「ハッカ」とは呼ばずに「メントール」(ちょっと前までは「メンソール」って言ってたような気がしますが)と呼ばれる成分で、薄荷の葉っぱを水蒸気蒸留して分離させ、そのウワズミあたる油分(「とりおろしゆ(取卸油)」)を工場に持込み、「ハッカ脳(メントール)」と言われる結晶とハッカ油に精製され使われています。
これもやはり、元々は大陸から伝わったらしいのですが、「和種薄荷」と呼ばれる日本で栽培される「薄荷」から、とても良いメントールが生成できたため、明治期においては国策の輸出品で、世界中から珍重され、各地で栽培されたようです。
「薄荷」は、その葉っぱを乾燥させ、蒸留して生成するので、葉っぱの重量に対して2%程度しか作ることができず、製品を運ぶのに、葉っぱのまま運ぶよりも「荷」が「薄い(軽い)」ことから「薄荷」=「はくか」=「はっか」となったという説もあるそうですが、どうもウソっぽいです。
北海道の北見には「北見ハッカ記念館」という施設があるのですが、この記念館のサイトには、
「薄荷」とは、入り交じって群がり生える(薄)地下茎の草(荷)という意味です。
と、でていますし、古くはその香りなどから「夜息花」「蕃荷菜」「人丹草」等と表記され、この内の「蕃荷菜」を書き間違えて「薄荷菜」→「薄荷」となったのではないかという説もあります。
と、いうことで「ニッキ」と「ハッカ」をまとめると、両方共、日本語で、
「ニッキ」→「肉桂」の音読みからの転化。「シナモン」のこと。樹木の樹皮からできる。
「ハッカ」→「薄荷」の音読みからの転化。「ミント」のこと。草の葉っぱからできる。
と、なります。
してみると、「シナモンロール」は「肉桂巻」、「ミントティ」は「薄荷茶」等と日本語表記も可能なわけですが、商品的には売れなそうなカンジがしますね。
写真は、「北見ハッカ記念館」。
ニッチな博物館マニアな私としては、ぜひ訪れてみたい場所です。