もともと、「建築や不動産の小さな疑問」というお題で始めていたこのブログですが、いつの間にか「建築や不動産」とは関係ない話のほうが多くなってました。
多分今後もこの傾向は続くと思いますが、今回は少し建築的な話で、「換気」についてです。
仕事柄、建物内の様々なクレーム対応に日夜追われているわけですが、その中に必ず出てくるのが、結露やカビに関しての話です。
そもそも、マンションなどの高気密な建物内で湿度が高い状態を生み出し、外気との温度差が高くなれば、結露が発生しないわけがありません。
そして、そのような状態を放っておけば、当然にカビの発生につながります。
ですので、対策としては「高湿度状態」をなくし「温度差」を少なくするしかありません。
もちろん、高湿度になってしまう発生源をできるだけ少なくすることが重要ですが、それ以上に重要なのは、「適切な換気」です。
今回は、意外と間違えがちな換気方法に関して以下に整理してみました。
●換気扇を回せばOKではない。
「換気」とは字の如しで、空気を入れ替えることなのですが、入れ替えるためには、出した分の空気(排気)を外から取り入れ(給気)なければいけないわけです。
つまり、換気扇は空気の出口を強制的に作って排気しているだけですので、空気の入口を別に確保し給気しないと換気の効果はありません。
よく「キッチンの換気扇が音ばかりうるさくて、煙をちっとも吸わない。換気扇が壊れてるんじゃないのか?」と言う方がいますが、そういう場合、閉めきった部屋で換気扇を回していることがほとんどです。
入ってくる空気が少ないのに無理に外に出そうとしているわけですから、当然換気扇には無理がかかって音も大きくなりますし効率も悪くなるわけです。
マンションの場合、ほとんどの建物に「給気口」というものが設けられていて、リビングのサッシ横についていたりするのですが、特に冬場は「冷たい風が入ってくるから。」と締め切っている場合が多いようです。
換気扇を使用するときだけでもいいので、空気の入口を作ってあげて下さい。
●窓を全開してはほとんど換気にならないことが多い。
先に書いたとおり、換気は空気の入れ替えがあって初めて行われます。
それなりに強い風でも吹いていれば別ですが、微風状態で窓を全開しても、風のチカラで内外の空気の入れ替えにはなりません。
今は喫煙者が減っている上、禁煙指向なのであまり実験もできないと思いますが、外にいるときでも、風がなければ目の前のタバコの煙は空気より軽いため真上に上がっていくだけで、空気が大きくは動かないでしょう。
ソレと同じで、窓を全開にするだけでは空気は動かず換気にはならないのです。
では換気扇を併用すれば良いかといえば、もちろんその方がずっと効果がありますが、やはり窓を全開していると効果が薄くなります。
なぜなら風に勢いがつかないからです。
息を吐き出すときに、口を大きく開いて「ハー」とやるのと、口を尖らせて細く「フー」とやるのでは、どちらに勢いが付いているのかは直ぐにわかると思います。
新鮮な空気を勢いのある風として室内に取り入れ、室内にあった空気を押し出して、換気扇から外に吹き出してもらうことが必要です。
結論的には、換気扇を回して、窓を細く(5cm弱)開け、かつ換気扇までの空気の道筋を確保してあげることが必要です。
●排気口と給気口が近くては換気にならない。
「換気扇も回して窓も開けているのに、寒いばかりで湿度が下がらない」という話もよく聞きますが、この場合は、排気口と給気口が近すぎて、ショートサーキット(短回路)になってしまっていることが多いようです。
排気口と給気口が近いと、入ってきた空気がすぐに排気されているばかりで、室内の空気は動いていないからです。
排気口(換気扇の吸うところ)と給気口(窓等)とは、適度な距離があって、しっかりと室内の空気を動かしている状態を作ることが大切です。
ショートサーキットになりやすいのが、窓の付いている浴室で、窓を全開して換気扇を回している場合です。
狭い空間で排気口と給気口が近いですから、結局浴室内の湯気が出て行きにくくなってしまうのです。
その上、窓全開ですと空気の流れがゆっくりになってしまうので、余計に効果が上がりません。
どちらかといえば、使用直後の換気に対しては窓をあけるよりも、浴室のドアを細く空け換気扇を回し、どこか別の部屋の窓を開けてそこから浴室までの風の道を作ってあげたほうが効果が高いと思います。
浴室のドアには「ガラリ」と呼ばれる換気口がドアの下の方に付いている場合が多いですが、それだけでは給気量は十分とは言えないので、ドアを細く開けるほうが良いと思います。
ドアを全開にしてしまうと、前述のとおり、風に勢いがなくなり、それ以上に、浴室内の湯気が浴室外に拡散したりしますのでご注意下さい。
●浴室やトイレの換気扇は回しっぱなしのほうが良い。
浴室に付いている程度の換気扇の場合、24時間回しっぱなしにしても1ヶ月の電気代は400円程度と思われます。
ここの換気扇が常にまわっている状態で、適宜給気があれば、室内の湿度が著しく上がることも少なく、浴室使用後の湿気もとにかくなくなるまで排気されますので、室内に広がっていくことも少なくなります。
賃貸管理を仕事にしている立場としては、換気扇の稼働時間が長くなればなるほど、機械としての寿命が短くなるので、貸主にとっては若干のデメリットが発生するため大きな声で言えることではありませんが、高湿度でカビ発生の状態がながく続いて、建物自体へのダメージが増えるよりは、マシだとも思います。
新しいマンションでは24時間換気システムが導入されていて、常に自動で換気扇がまわるようになっているものもありますが、その場合でも、給気が必要なのは同じですので、注意が必要です。
と、いうことで、効果的な換気に関しての簡易図を作ってみましたので、ご参考まで。
※画像がぼやけ気味でスイマセン。
ちなみに、浴室内のカビ対策に関しては、ネットでも色々な情報がアップされていますが、個人的な経験では、以下の方法をおすすめします。
・使用後は、お湯で浴室内の壁や浴槽、ドア等を流す。
→多くのカビ菌は40℃程度の温度で死にます。死なないまでも活動力はかなり弱まります。よく「冷水をかけ浴室内の温度を下げる」という話を聞きますが、カビ菌の活動温度が20℃前後にあるのでそれ以下にするためとはいうものの、結構な温度まで温まった室内をまたそこまで下げるのは結構大変ですし、せっかくお風呂の中で温まったのに、冷水なんかかけてたら湯冷めしちゃいますよね。どちらかと言えば、高い温度のお湯をかけた方が、効果も高く、人にも優しいと思います。
→また、カビ菌の食料となる湯垢や石鹸カス等を流すというのも、大きな意味があります。実際カビが発生している場所をよく見ると、直接お湯が掛かる場所ではないところの方が多いと思いませんか?つまり、跳ねたシャンプーの泡等がお湯で流されていないところにカビは発生しているわけです。浴室内の四隅や棚の影、リモコン周りなど、直接お湯がかからないところをちゃんと流しましょう。特にドアは、表面がゴツゴツした半透明素材だったり、ゴムパッキンが入っていたりするので、そういう部分に色々なカスがたまりやすいので、上から下まで念入りに流すことをおすすめします。
・換気扇は24時間回しっぱなしで、ドアは3cmくらい開けた状態で放置する。
→これは、前述のとおりの換気方法の実践です。効率的な換気により内部の湿度が早く下がり、カビの発生が抑制されます。ここの換気扇が回しっぱなしだと、そもそも空気の流れは全てが浴室に向かいますので、他の部屋に湿度がこもることも減りますので、居室のカビ対策にもなります。
・1~2ヶ月に1回程度のカビキラー。
→そもそもあまり発生していないので、多少気になる部分にカビキラーを使う程度で事足ります。それでも、半年に1回くらいはそれなりのお風呂掃除はしていますが。
正直なところ、建物の間取りや位置関係、室内での滞在時間、人数、利用している機器による湿気の発生状況等々により、一概に言えるものではありませんが、以上の実践で私の家では一年中結露が発生したことがありませんし、カビもほとんど出ません。
もちろん、燃焼系の暖房も使っていないので、湿気の発生源が少ないこともあるかとは思いますが。
炎が見えない上に蒸気も見えていないのでピンと来ない方が多いですが、石油ファンヒーター等の燃焼系の暖房機は、かなりの水蒸気を発生させていますので、適切な換気無しに使用継続していれば結露の要因としては相当な影響力があります。
火が見えるタイプのストーブでも当然同じですし、ましてや上に薬缶など置けば・・・・。
実際の換気は、部屋の間取りや構造、向きや機器の能力、環境や使い方でベストな方法は様々です。
今回ご紹介した内容が必ずしも全ての建物で有効とも限りませんが、基本的な考え方として参考にしていただければ、と。
これが、「給気口」。
見たことはありますよね。
使ってあげて下さい。
(必ずしも全ての建物に付いているわけではありませんので、あしからず。)
2015年2月4日に「続・換気の話」もUPしましたので、よろしければそちらもどうぞ。