ネットで「メジャー」と検索すると、最初に出たのが同名の野球漫画に関するものでした。
が、
今回の私のネタは、左の写真の方です。
一応、私も業界の端っこにいる人間ですので、これを「コンベックス」と呼んでいましたが、どうやらこの名称が一般的ではないようなので、今回はそのへんを少し調べてみました。
正直なところ、私は英語でこの製品を「コンベックス」というものなんだろう程度に思い込んでいましたが、そもそもこれを「コンベックス」と呼ぶのは、日本の建築業界だけらしいのです。
英語では、「Tape Measur」(テープメジャー)もしくは「Measuring Tape」(メジャリングテープ)と呼ぶそうです。
ここでいう「Measur」は、「計測する」という意味の英語です。
冒頭の野球の「Major」は、「大きい」とか「重要」とか言う意味の方で、見たとおり全く別の意味の言葉です。
一般の人がいわゆる「巻尺」を指して「メジャー」というのは、この「Tape Measur」(テープメジャー)から来ていまして、してみると圧倒的にこちらの方が正しい呼び方のようです。
では何故、日本の建築業界でこれを「コンベックス」というのかといえば、どうやら日本のどこかのメーカーがこの「コンベックス」という名前をつけた「メジャー」を発売して、これが非常にウケタために広まり、定着したようなのです。
そもそも「コンベックス」とは英語の「Convex」のことで「凸型」の意味。
このメジャーは引き出すとテープ部分が「⌒」型に湾曲しており、これがあるから、ある程度引き出しても”ぐにゃっ”とならずに自立するわけで、この「⌒」型を指して「凸型」=「Convex」=「コンベックス」と成ったようです。
というわけで、『金属製の巻尺が「コンベックス」で布製の巻尺が「メジャー」』だと思っている人もいたようですが、間違いです。
英語では基本的にどっちも「メジャー」ですし、「コンベックス」は「⌒」型金属製メジャーを指して日本の建築業界だけが使用している「業界用語」というのが真相です。
ちなみに、もうひとつ気になったのが、この「コンベックス」で測れる長さ。多分もっとも主流なのが「5.5m」。
他にも「3.5m」とか「7.5m」等が良く使われているようですが、何故に「.5」という半端がついたものなのだろうか、と。
実はこれも日本独自のもののようです。つまり尺貫法の名残。
日本の建物は今でも畳基準で「○畳」という広さ表示や「○坪」という面積表示を使用しているくらい、建築的には古来の日本人サイズが踏襲されています。
そうすると、実際の建築現場でも表現上は「3.6m×2.7m」と書いてあっても、ようは尺貫法でいう「2間×1.5間」、尺で言えば「12尺×9尺」であり、つまり6畳間を作るとこういうサイズになる訳です。
「1尺」は正確には「30.303cm」なので、「5.5m」というのは「18尺=3間=5.45454m」まで計測できる長さというわけです。
6畳間の短辺が二つ並ぶと3間ですから、使用頻度と使い勝手の関係で、この「5.5m」というサイズが丁度良かったということなのでしょう。
「7.5m」の場合ですと「24尺=4間=7.27272m」まで対応ということで、これも尺貫法的には丁度良い長さなわけです。
ただ、「3.5m」は「12尺=2間=3.63636m」に足りていないので、こっちは「.5」の表記にあわせてのものと思われます。
ですから、当然に海外の同型製品では「5.5m」という長さは主流ではありません。
そもそも職人が使用する場合が多いので、「フィート」や「ヤード」といったその国の長さの単位で作られていたり、メートル単位のものでも「8m」とか「10m」など、メジャー本体の外形サイズのバランスを見てやはりキリの良い数字のものが主流のようです。
以上、いつにもまして役にたたないお話しでしたー。