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小さなギモン調べてみました!

建築・不動産から言葉のトリビアまで、仕事の中で見聞きした小さなギモンを調べて報告していきます。

「いたち せいしゅう」って誰?+おまけの話

本当かどうかわかりませんが、「伊達 政宗」「いたち せいしゅう」と読んだ人がいたとか。

これはまぁ極端な例だと思いますが、確かに読み方が難しい、というか、よくわからないまま無理矢理読んでいる漢字ってありますよね。
建築・不動産業界にもそういうのがいくつかありますので、今回はそんな漢字をいくつかご紹介したいと思います。

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●矩計図(かなばかりず)・・・

簡単に言えば、建築図面の中の断面詳細図です。
各部の仕上げや細かな寸法等を記した図面で、簡易な建物なら「平面図」と「矩計図」だけで建物が建てられるくらい、基本的な図面です。
でも、「矩」って漢字が読めずに「きょけいず」とか「くけいず」と言ったり、「かなばかり」と言う言葉は知っていても「矩計」と言う文字と繋がらない人は、業界にもいるようです。

「矩(かね)」には、直線・直角・垂直などの意味が有り、地面を基準にして垂直方向に建物の状態を表現した図面と言うことで、「矩計図」と呼ばれます。

ちなみに「矩」と言う漢字は「く」とも読み、天文学で惑星と太陽の見た目の角度が直角になる現象を「矩(く)」と呼ぶそうです。

●長押(なげし)・・・付長押2.JPG

「ながおし」ではありません。
以前にも「名前がわからないもの」の中でご紹介したので覚えている方もいらっしゃるかもしれません。

「長押」はもともと和室の鴨居の上等を床面と平行に柱と柱を結んで補強する材料のことでした。
しかし、木造の技術が進むに従って、徐々に装飾部材となり、今ではマンションの和室等で「付長押(つけなげし)」としてみることの方が多いかもしれません。

仕事で部屋のご案内をした時に、よく「これ何?何のためにあるの?」と、よく聞かれる部材でも有ります。
現代の「付長押」には、コンクリート製で平らな壁に、ハンガーを引掛けたり、ピンを刺したりするためについていると考えて頂ければ良いと思います。

●競売(けいばい)・・・

「きょうばい」とももちろん読むのですが、不動産の世界、というよりは法曹界では「けいばい」と呼ばれます。
よんどころない事情で、裁判所を通じて売りに出される不動産は、多くの場合「競売(けいばい)」にかけられ、売られるわけですね。

「競」という漢字は人が走って争う形を現しています。
ですが、「競馬」を(きょうば)とは読まないですし「競歩」を(けいほ)とは読まないですよね。
どうも法律の世界では、他にも色々と違う読み方の漢字が多いようですね。

●陸屋根(ろくやね)・・・

「りくやね」ではありません。
一般的な鉄筋コンクリート造の建物のように屋根というか屋上が平らな屋根を「陸屋根」といいます。

「陸」には「平ら」の意味があるので、こう使われます。
逆に平らでない部分のことを「不陸がある」といいますが、この場合は「ふりく」と読むのが普通です。

「陸」を「ろく」と読むのにあまりなじみがないかもしれませんが、金銭証書などで数字を大字(だいじ・・・これもこの場合は「だいじ」と読みます。「おおあざ」ではありません)で書く場合には、「六」は「陸」と書きます。

ちなみに、大字の数字を1から10まで紹介すると、「壱・弐・参・肆・伍・陸・漆・捌・玖・拾」と書きますが、「壱・弐・参・伍・拾」以外は読めない人が多いかもしれませんね。

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多分、意識していないだけで他にも色々とあるかもしれません。

建築関係ではありませんが、「天津丼」を「てんつどん」と思っていた人がいましたからねぇ。

でももし、私がどこかで間違った読み方をしていたら、
できるだけ人のいないところで、こっそりと教えてください。

<おまけ>

先日、弊社で季刊で発行している「マイザニュース」に、江戸時代の貨幣制度の話を書きましたら、質問が有りましたので、ここで少しだけ補足しておきます。

(何故、不動産屋の会報に、このような記事が出ているのか?という根本的な質問は受け付けませんので、あしからず)

で、頂いた質問とは、
「金貨」の体系の「朱」に、「一朱銀」や「二朱銀」等の「銀貨」が入っているのは何故か?」
と言うものでした。

マイザニュースを読んでない人には何のことだか判らないと思いますので、できるだけ簡単に説明しますと、そもそも江戸時代の貨幣制度は「三貨制度」といって、三つの貨幣体系が同時期に流通しており、ある意味とても複雑でした。
(日本国内で、「円」と「ドル」と「ユーロ」が同時に流通しているような感じです)

その「三貨」とは「金貨」「銀貨」「銭貨」を指しており、それぞれに
「金貨・・・1両(りょう)=4分(ぶ)=16(しゅ)」
「銀貨・・・1貫目(かんめ)=1000匁(もんめ)=10000分(ふん)」
「銭貨・・・1貫文(かんもん)=1000文(もん)」
という貨幣単位が有り、これを江戸時代の人々は同時に使用していました。

(それぞれの交換レート等に関してはここでは触れません。ご了承の程を)

当然のごとく、「金貨」は「金」で出来た小判等でしたし、
「銀貨」も「銀」で出来てはいましたが、「銀貨」はその重さで価値をはかっていましたから、適当なサイズの「銀」の塊を秤ではかって取引しており、特定の形は有りませんでした。
また「銭貨」は当初「銅」で作られていましたが、次第に「真鍮」や「鉄」が主流となっていきました。

ここで、注意してほしいのは、この「金貨」「銀貨」「銭貨」というのは、それぞれの貨幣の材質を直接さしているのではなく(元々は直接指している部分も有りました)、それぞれの材質を基本とした通貨体系としての呼び名であると言うことです。

とはいえ、「金」や「銀」は現在でも地金としての価値があるように、当時としてもこの地金の価値を基本にして、一両小判は一分金の4倍の金含有量があるのが基本でしたし、「銀」に至っては直接「銀」の重さで価値をはかっていた(秤量貨幣)わけです。

ところが、「悪貨は良貨を駆逐する」の話の通り、特に金貨において金含有量の少ない貨幣が登場し、幕府は「金」そのものの価値ではなくて当該貨幣に表示した額面で取引をする貨幣(計数貨幣)への移行を進めていきました。
元々、「金貨」や「銭貨」は基本的に計数貨幣だったわけですが、名実共に移行していったわけです。

この過程において登場したのが、「一朱銀」や「二朱銀」等で、つまり「金貨体系」の単位なのに材質は「銀」という、「銀でできた金貨」というわけです。

ただでさえ「三貨」である上に、「銀」に至っては、その実際の材質とは別に「秤量貨幣」の「銀貨体系の銀貨」と、「計数貨幣」の「金貨体系の銀貨」があるわけですから、ややこしいことこの上ないと言えます。

それでも当時の文献や物語等をみると、市井の人々はこれを器用に使いこなしていたようです。

お金の話に興味があるようでしたら、日本銀行金融研究所の貨幣博物館のHPものぞいてみると面白いですよ。

この記事を書いた人

斉藤 一則

斉藤 一則(株式会社マイザ)

事業企画担当。
遊休地や低利用建物の効率化提案から賃貸管理・リフォームサポートまで、建築・不動産関係が専門。
旅行好き。

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