過日、弊社がお頼みしてる会計会社から電話があり、顧客の某氏が所有する賃貸家屋の建物管理と賃貸管理を某社に任せているが変更したく、どこか業者はいないかと言っているのでマイザさん相談にのって頂けませんか。という内容だった。
一般的に町場の不動産業者は、賃貸建物の賃貸管理を行っているのが大部分で、建物管理まで請け負っている業者は大手のハウスメーカーに多い。
ハウスメーカーの社員が土地を所有する地権者の処へ訪問し、「ここに賃貸建物を建てませんか。丸ごと弊社が借りて、〇〇年の家賃保証もするし、建物管理も定期的に弊社で行うので、オーナーさんは毎月家賃を受け取るだけで、いいんですよ」と。・・・これを家賃保証型のサブリース事業と言う。
しかし、所有する土地の立地や利便性が優れていれば、余り問題は起こらないが、契約書の内容を十分に吟味する必要がある。
最近の話題では、有名な某サブリース事業を得意とするハウスメーカーが造った建物が違法建築で摘発されたと新聞紙上を賑わせた。首都圏等で独身寮として借りていた企業も「こんな危険な建物には社員を住ますことはできない」と多くの企業が賃貸契約を解約したという。当然である。
会計事務所から頂いた内容から、弊社の社員がお伺いしお話を伺ってみると、はたしてその建物はサブリースで契約された物件だった。
何故、解約をしたいのか理由を聞いてみると、最近相続で所有した物件であり、その建物を管理している業者が訪問をしてきて、「しばらく改修工事をしていないので、建物の各所を改修・リフォームするので、宜しくお願い致します」と見積もりを持ってきたと言う。オーナーも建物の中を見ていないので、「建物の中も見たいし、見積額も高いと思うので、知り合いの業者を使うことも考えている」と言ったら、「契約上、他の業者は使えませんし、定期的に改修を行う旨、契約書にも記載されています」と言う。余りに担当者の言葉が気に障ったので、担当者を変替えて貰ったが、内容は変わらないとのこと。
暫くして、賃貸建物を見に行ったら、既に工事が始まっており、急遽取りやめさせたとの事。オーナーの承諾も得ずに工事を行うなど、ありえないと、この業者とは契約を破棄したいということだった。
弊社も多くの地権者様から物件をお預かりし賃貸管理をしているが、初めて訪問された地権者の方からTV等で有名なハウスメーカーの営業マンが来て、「お宅の未利用地に賃貸建物を建てませんか。当社が建物を借りて30年の家賃保証もするし、メンテナンスも当社責任をもって行うので、安心ですよ」というが、大丈夫だろうかというお話を時々受ける。
不動産の価値は「立地と利便性」にあり、500坪の土地があるからそこに賃貸マンションが建てられるとは限らないことを十分に考えて頂きたい。「だって、30年も家賃保証をするといっていますよ」とその地権者は不思議そうな顔をするが、「当初に決められた家賃の額が30年間も一緒ではないんですよ。経済動向や建物の経年劣化等により少しずつ客が少なくなり、家賃を下げざるを得ず、その内にローンも支払えない状態となり、全国では多くの裁判事例があります」とお話する。
当然に住宅地図で場所を教えてもらい、必要なら現地調査もするが、賃貸事業で生計を担う多くの場合は、「将来の入居率や収入に不安要素がある土地であり、今行うべきではありません」と答えることの方が多いような気がする。
未利用地をお持ちで、賃貸事業でも行いたいなと思う人は、最初にハウスメーカーに相談するのは得策ではない。建築・不動産に精通した人に、将来とも安定的に賃貸が可能な土地であるのかどうかの調査を依頼することが最初に行うことであるとともに、適正な工事費で建物を建てることにも繋がる事となる。