3月末に入り、急に暖かくなった陽気に載せて、長町の自宅マンションの桜は、もう5分咲きになりました。
昔から歴史や時代小説が好きでよく読んでいる。中国の春秋戦国時代や項羽と劉邦、三国志の歴史を書いている宮城谷正光の小説からは、「四面楚歌や燕雀鴻鵠」などの本来の意味を学ぶ。日本の時代小説では司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢修平、隆慶一郎など、新しい作家では葉室麟や江戸の食を描いた高田郁など・・・。特に池波正太郎の作品が面白く、ほとんどの本は読んだのではないか。
先月、上京する前に駅の本屋に立ち寄り、「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を手に取った。作者は夢枕獏。実は彼の作品を読んだことはなかったが、「空海」という名にひかれて買ってみた。
空海と言えば、唐に渡り、留学僧として20年の滞在期間を与えられていたが、密教の師・恵果和尚から、その資質を認められ、僅か半年余で密教の教えの全てを授かり大阿闍梨となり、2年ほどで帰国し高野山で真言宗を広めた日本最高の宗教人であるとともに、四国香川県にあるの満濃池の大改修などでは類まれなる土木技術を発揮した人でもある。
「四国八十八か所の巡礼」や高野山では現在でも空海は生きており、毎日の食事を欠かさず捧げると言う正に大日如来の生まれ変わりである。
物語は8世紀~9世紀の話で、日本ではまだ蝦夷の討伐を行っており、阿弖流為や坂上田村麻呂が登場する時代であり、中国では唐の時代で、その都・長安は西のローマ帝国と並び人口100万人を有する世界最大の都市であった。
映画にもなった事であり、本の内容は読んでいただくとして、その時代背景が興味を引きたてた。空海が唐を訪れた50年ほど前には、かの楊貴妃が生存しており、歌聖・李白が活躍した時代で、空海が在唐している頃には白楽天がいたと言う、正に遣唐使派遣時代の黄金期の話であるが、分厚い4巻の文庫本も一気に読み進められた面白いファンタジー小説であった。