平成17年3月に不動産登記法が改正されました。
過去に不動産の売買等で不動産登記を経験された方は従来の方法をご存じかと思いますが、今回の改正内容の主要点は以下のものです。
●これまでの書面申請に加え、オンライン申請も出来るようになりました。
●所有者が保持する権利証(登記済み証)発行制度は廃止され、新規取引に伴う所有者には、登記識別情報(通知書に記載されている12桁の数値が所有者を証明するもので、他人がその数値を知っていれば所有者となることができるので、管理は厳重を要する)という一枚の紙が交付されるようになりました。
但し、現在お持ちの権利証はそのまま有効です。
●登記権利者(売買では買主)や登記義務者(売買では売主)の本人確認がより厳格になり、委任状による代理人(身内や知人等)の取引が困難になりました。
その他、変更点はありますが、実際に取引上直面したお話しをしたいと思います。
① 権利証を無くしてしまった。
売買などの取引で、決済時には売主が買主に売買代金受領と同時に権利証を引き渡すこととなっていますが、権利証を無くしてしまったらどうなるのでしょう。(先祖代々の土地で何処に権利証が有るか判らない。火事で権利証を消失したなど。)改正前ですと、権利証を無くした旨、登記所に届け、登記所から郵送で本人宛に現実の所有者であるかどうかの確認が終了するまでは、決済が出来ませんでしたが、改正後は申請代理人(司法書士等)が本人確認をして、現実の所有者で有る旨を確認できれば、取引が可能となりましたので、作業も期間も簡便になりました。
② 所有者本人が病気や痴呆症、高齢な場合などで取引に同席できない。
改正前は、印鑑証明書付きの委任状などで、代理取引が可能でしたが、改正後はそれが不可能となりました。
これは、より本人確認を第一とするとの観点から、申請代理人(司法書士等)が、売買の売主が本当にその物件を売却する意志があるのかどうかを、実際に本人に面談して確認作業をすることになっています。もし売主本人が売る意志が無い、または正常な状態で売買行為を判断できない(寝たきりで言葉が交わせない。痴呆症により正常な判断ができないなど)と申請代理人が判断した場合は、取引が無効とされ登記ができないこととなりました。
これは、不正に取得した金員を売買等の隠れ蓑で、マネーロンダリングを防ぐ観点から改正されたもので、より本人確認が重視されています。
最近あった事例では、所有者(父)が高齢により施設に入院し、言葉も明確でなくなったが、申請代理人が施設に赴き、売却意志を確認して取引が成立した事例。また、所有者が寝たきりで言葉も交わせない状態であるが、以前より所有土地の売却を依頼され、その子供が後見人の申請を家庭裁判所に申請し、認可された後、取引を行った事例など。
所有者が寝たきりや痴呆症などで正常な判断ができない状態の時は、早めに家庭裁判所に後見人等の申請を行わないと、即座には取引ができなくなるので、売却を考えている場合は、早めの対策が必要となります。
【登記識別情報:通知書】 通知書の目隠しシールを剥がすと12桁の数値が隠されています。この数値を知っている者が当該物件の所有者と認識されるので、再度売却する等、必要のない時はシールを剥がさず、厳重に保管しておくことが肝要となります。