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マクロの眼

プロジェクトエンジニアを僭称(?)中

2017年6月のアーカイブ

今や仙台を代表する伝統「的」芸能の一つとなった「すずめ踊り」。その歴史は意外に新しく、現在我々が認識しているいわゆるすずめ踊りは「新・すずめ踊り」と言われ、30年の歴史しかありません。

そこにはある意味では仙台らしい、日本最大のバブル遺産の街、仙台の象徴的な歴史秘話ヒストリアがあるのでした。

【バブル遺産】

定禅寺通りのすずめ踊りは、あまり考えずに適当に撮っても、其れなりに楽しげに写って「写真映え」するのでオススメ。

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ところでこのすずめ踊り」。

個人的には「バブルの遺産」のイメージ強し

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カサマが小学二年生の時に青葉まつりが始まり、その時には「すずめ踊り」なるものは聞いたこともなく
小学三年の時に山形に引っ越し、小学6年で再び仙台に戻る(1989年)のですが、その時にニュースで「伝統の踊り」とか紹介されている。
運動会でも、扇子を持った「すずめ踊り的な創作ダンス」を若い教員が中心となって教えて披露する。

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むう?
カサマが仙台にいなかったわずか3年で何が起こった?!

時はバブルの狂乱時代
扇子を持って踊り狂う姿は、「ジュリアナ東京」を彷彿させていたですよ。
すずめ踊りとは何たる乱痴気騒ぎ破廉恥であることか、全く日本はどうなってしまうのか、実に嘆かわしい。そう中学時代には思っていたのでした。

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あれから25年。
30年も続けば、三世代が踊る姿も見られ、立派な「伝統」になりつつある。
手締めの「伊達の一本締め」も、いつの間にか祭りで定着しているし。

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80年代に「開発」された祭りにも関わらず、スズメ踊りが「YOSAKOI」ほど古臭く感じず、「似非伝統」っぽくないのは、この優れた「お囃子」の曲調にあるんだと感じるんですね。軽快なリズムの中に、実は少しもの悲しがある曲調は、30年たっても陳腐化した感じがなく、むしろクセになる。
今年から在来線の発車メロディーもこれになり、ますます定着するのでしょう。
(ただ、発車メロディだと、少し安っぽい気がするのはなぜだ・・・)

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お囃子は共通ながら、踊りの内容はかなり祭連ごとに異なり、適度に自由度があることが、この祭りが今や仙台のみならず西日本などでも祭連が生まれて踊られるようになった背景にあるんでしょうな。
誰かが本気になれば、「YOSAKOI」的に全国普及きるやもしれぬ。

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伊達武将隊も震災後のスタートですが、今や普通に青葉まつりに適応し、必須の存在感になっているし。

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山車が夜の巡行を始めたのは、意外にも震災後でここ5年の話し。
こうして伝統は「創られる」

この「現代に【復活】の形で新たに生み出された伝統」の開発経緯は、詳細に記録に残っています。

「伊達の一本締め」なんて、震災後の普及だ。

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この祭りが始まった時の中心は、当時の青年会議所や役場の方々の尽力が大きかったそうで、カサマより二世代ほど上の世代ですな。
今や私の子供世代がそれを受け継ぐようになっており、承の軌跡がいたるところで観られます。

私に子はないがな!

今や「生まれる前からすずめ踊りはあった」世代も多く踊るようになり、その進化深化、そして真価は、現生世代が愉しみながら伝承できるかにかかっておるんでしょうなぁ。

<補足>

かつてカサマが宮城大学の学部生だった西暦2001年頃、学長の野田先生の授業の中で、YOSAKOIソーラン祭りの仕掛け人である長谷川岳氏がゲスト講師として招聘され、伝統祭りが存在しない札幌に、新しい祭りをインストールするこれまでのプロセスと今後の戦略についてお聞きしたですよ。

当時祭りは10年目を控え、実行委員会の株式会社化のタイミングでして、長谷川氏はIT起業ブームに沸く当時、ホリエモンなどと同世代の「新しいタイプの起業家」として紹介されていたと記憶しております。

YOSAKOIソーランが舞踊として世に登場した時期(1992年)と仙台の「新・すずめ踊り」が開発された時期(1987年)は案外近く、この二つの伝統芸能「的」舞踊祭りの普及プロセスが、今後どのようになっていくのか非常に興味深かったわけです。当時の長谷川氏のプレゼンを聞いて、「最初は学生ならではの、若さ故の『勢い』がメインだったが、今や法人化、しかもNPOではなくて株式会社化(当時は最低資本金1000万円が必要な時代)で祭りの定着を図るなど、札幌は実に戦略的だ」と感心したことを覚えています。

あれから15年。

当時、「本質が似ているな」と思われた二つの祭りは全く違う普及ストーリーを辿り、個人的な結論から言うと「すずめ踊り」の方が理想的な普及の仕方で「文化」として根付き、今後の発展性が望めるな、と思っております。デカルチャー!

大きなポイントは

  1. 拡大志向(YOSAKOIソーラン)か、浸透指向(すずめ踊り)か。
    舞踊型の祭りがない地域をターゲットに、日本全国各地に「YOSAKOIソーラン」を普及させて、「本場」としての札幌を確立。だがその代償として、札幌市民の多くがまつり自体にそれほど愛着がなくむしろ反発を持っている層も。対して「すずめ踊り」は、たまたままずは自分たちで楽むことを優先(別に「浸透戦略」を誰かがリーダーシップを以て企図して設計したわけではない)にし、今や小学校や職場などで「祭連」が生まれ、市民に愛される。これは現代の「地産他消型 vs. 地産地消型」のマーケティング戦略論に通じるところがありそうです。
  2. 自由すぎる(YOSAKOIソーラン)踊りと、共通のお囃子と両手扇など、適度な制約と自由度(すずめ踊り)
    一般庶民には自由すぎるフィールドは扱いにくく、適度な共通ルールと制約があった方が、多くの人間にとっては参加の敷居が下がり、またむしろ工夫の余地を生み出す。
  3. 歴史継承の編集度合い
    一応、藩政期の「仙台祭り」のストーリーと青葉神社(実は藩政期とは無関係で、歴史の浅い明治期に創設)を組み込み、「石工の踊り」の発掘など意外に精密で巧妙に編集されていて、重厚さには欠ける相応の歴史に対する発掘作業の手間リスペクトがあった。

と言ったところで、西暦2000年前後にYOSAKOIソーランが全国各地で猛威を振るったときの、一仙台市民としての焦りは結果的には杞憂であったようです。

仙台はおば祭り(1985年)、光のページェント(1986年)、すずめ踊り(1987年)、ジャズフェス(1990年)、仙台大観音開眼(1991年)と、バブルの勢いで特定の時期に様々な文化がインストールされ、現代の仙台のイメージとベースが形成された感がありますが、「すずめ踊り」のように細かくその普及プロセスを見ると、現代でも通用するインストール手法が偶然実行されていたりして、案外その知見は参考になります。

バブルに聞け!

バブル遺産の街、仙台ならではの歴史に学ぶ姿勢として、今後もバブルにリスペクトしながらこの街の未来を考えていきたいと、不肖カサマは改めて認識を新たにするであります。

あらゆるものがロストしたロストジェネレーションであるところのカサマの世代は、「飲み会の席で日本酒を大いに飲む」という昭和期の慣行を現役で行う世代と、「そもそも飲み会って、お酒飲まなければダメですか?」という世代の双方に囲まれ、また双方を理解する特殊層なわけですが、そうは言っても「乾杯のビールの後は日本酒」などという、よく考えたら日本古来からの伝統でも何でもなく、おそらく100年も歴史はない近代的な慣行が、実はそもそも東日本特有の一時的な現象であり、東京以西は乾杯の後の飲み物は焼酎ベースかウーロン茶だということに気づいたのが2008年の東京留学時。

そうした中でも、カサマの東京時代の男友達は日本酒よりも焼酎が多い中、なぜか女友達は日本酒飲みが多く、しかも新潟の日本酒の名前をよく知っている(当時はまだ「獺祭」がこれほど首都圏でもてはやされる前)。確かに新潟は蔵の数や著名な銘柄も多いが・・・。

その背景のナゾを解くヒントを、先日新潟にサンセットを見に行くついでに道の駅で車中泊した際に偶然得たですよ。

2017年5月1日(月)

【トライアル&リピートモデル】
新潟市の道の駅「新潟ふるさと村」にて車中泊
「政令指定都市の道の駅」の実力がいかほどのものか?そう思って入ると、想像以上の実力。これは凄い。

ちょうど県内の蔵のフェアをやっていたのですが、これがさらにびっくり。
ほとんどの蔵の主力商品で、個性豊かな「一合瓶」を用意しているではありませんか。まさか昨年優秀賞とった越路吹雪や最高金賞取った笹屋茂左衛門まで・・・。

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これを売り場の前面に陳列して「売れ筋」にし、一升瓶を奥に置いて「見せ筋」に、そして本命の四合瓶を「売り筋」にしておる。
案の定、積極的な試飲を受けつつ、観光客が数本単位で一合瓶の方を土産用と自分用に組み合わせて、かなりの本数を買っている。そして同封するリーフレットにはメーカー直販のサイト誘導

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これはブランディングに欠かせない、典型的な「トライアル・リピート・モデル」。これをほとんどの蔵が実践しているとは!?

このカサマ、酒の全体的な各蔵の総合力は宮城が最強と心得ておりますが、もともと酒呑みのおっさんどもは兎も角、若い世代や女子の皆さんが、妙に新潟の酒に詳しくて愛好するのは、こんな切磋琢磨と努力が背景にあったわけです。

一番自信があって(高額で)オススメの酒は一合瓶を用意する。
「一合瓶はコスト高だし面倒臭いし客単価が下がるからやらない、やっても二線級の。」とか言っている宮城と真逆ではありませんか。。。

これがいわゆるマーケティングの差というやつか・・・。

いやぁ、仕事を完全にオフにして新潟に遊びにきたお陰で、仕事の参考になったなぁ。(注意・あくまで今回の目的は、日本海に夕日を見に行くことです)

今回買ったサンプル、経費で出していいですかね?

【補足】

カサマは東京在住時代、歓心を得ようという邪な感情により、仙台から東京に帰る際(当時概ね月1回仙台・東京を往復していた)に日本酒好きな女性の皆さんに何本か日本酒をお土産に買おうと目論んだことがあるのですよ。

ところが、四合瓶ですら3本も持つと2kgを超え、しかも割れ物ということで、とにかく日本酒の輸送が極めて困難

というか、いくら「日本酒が好き」と言っても4合瓶を短期間で消費できる女性はよほどの酒豪で、その結果、無難に萩の月や笹かまぼこを手土産にせざるを得なかったのです。

すなわち、カサマが結婚できなかったのは酒造メーカーがこうした市場ニーズに沿った商品開発を行わなかったためであり、これに関してカサマは単にマーケティング戦略上の瑕疵を指摘するにとどまらず、断固として人権問題と認識して正式な抗議を(以下略)

これを代替するのはもしかしたらワンカップなのかもしれませんが、残念ながらワンカップが常磐線で夕方に満員にもかかわらず空けて飲み干して咆哮するオヤジ達の陰謀によりイメージが悪く、ナンパのツールとして活用するには不適切

しかし、あれから8年あまり過ぎ、少しずつ一合瓶が普及しはじめ、今や東京では一合瓶専門店が現れるなど、人権問題の解決の兆しが見られるのです。

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所狭しと集まった、全国の一合瓶たち。

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ところが、宮城のお酒は一ノ蔵さんと浦霞さん以外に都内で流通している一合瓶ないらしく、むしろ西日本の地域よりも存在感が薄い。多く目に付くのは新潟と長野のお酒で、この売場だけ見たら、宮城県が2017年の全国新酒鑑評会にて出品23製造場のうち21製造場が入賞、しかもその20製造場が金賞を受賞という、金賞入賞率91%という驚異の日本酒品質県だということに気づきようがありません。(参考:福島45銘柄中金賞22、新潟70銘柄中14、長野59銘柄中10)

(ほんとうは)圧倒的ではないか、我が軍は!

しかし、しょせんはそうした事実を単なる情報発信ではなく実物として飲めるようなインフラ整備が行われなければ、実際に購買には結びつきようがありません。この一合瓶コーナーには外国人と女性ばかりがおり、最初からオッサン酒豪はアウト・オブ・眼中になっていて、なるほど、こうしたところからビギナー教育が始まっているのだ、と痛感するのでした。

今からでも遅くはないから、宮城の酒蔵の皆様には、一人の宮城県民の人生を助けると思って、是非とも本気モードで一合瓶の企画を推し進めて頂きたいと、カサマは心の底より意見具申するのであります。

この記事を書いた人

笠間 建

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