今回は、珍しく、不動産屋っぽい話題を。
平成29年の民法改正で、
「個人の根保証は極度額を限度として責任を負うこと」
(改正民法第465条の2第1項)
「極度額の定めのない保証契約は無効となること」
(同条の2第2項)
が規定され、いよいよ今年(2020年)の4月から施行となります。
「唐突に、なんのこっちゃ?」
という方もいると思いますが、簡単に言えば、
「これまでは、保証人になると、発生した損益や賠償に対して、
無制限に責任を取らされたけども、
これからは、予め上限額を決めて、それ以上の額の責任は
とらなくていいよ。」
という、話です。
今でも言われるのかどうかわかりませんが、
私の年代では、
「保証人になんかなったら、大変だから、
簡単にハンコなんかついちゃダメだぞ!」
と、教えられて育ちました。
それくらい、いままでは、「保証人」というのは、
いざ何かあると、大変な事になる、財産がなくなったりする、
という意味の教えですね。
この「保証人」には、賃貸住宅を借りる時の
「連帯保証人」も含まれますので、
今年の4月以降の賃貸借契約の際に、
保証人が必要な賃貸借契約を締結する場合には、
極度額(上限額)が定められた、連帯保証人承諾書に
署名捺印をいただいて、契約をしなければいけないことになります。
で、ここで問題になるのが、
「その極度額って、いくらなの?」
という事。
なのですが、法の規定では、
「そこは、当事者間で話して決めてね」
となっており、具体的な規定はありません。
不動産業界的にも、業界団体が色々と検討を進めていますが、
現時点(令和2年1月)で、未だ具体的な指針は出ていません。
民法改正後に国土交通省が「極度額に関する参考資料」
というものを出しており、その中の調査結果では、
「損害が発生した事例の内の70%以上が、
賃料の6か月分以内の額で収まってるよ」
となっていますが、逆に言えば、
3割ぐらいは、6か月じゃ収まらないという事で、
貸主側からみた場合では、6か月では安心できません。
しかしながら、あまり高額な極度額設定では、
そもそも連帯保証人になってもいいと言ってくれる人が、
激減するでしょうし、そうなれば、賃貸借契約自体が難しくなります。
そんなこんなで、業界団体も具体的な指針を出せないでいるわけですね。
そもそも、核家族化が進み、少子高齢化もあって、
賃貸借契約時に保証人のなり手がいない、
曰く、両親は他界している、
曰く、両親は年金生活者で保証できない
曰く、子供もいない
曰く、親戚付き合いがない
という状況が多々ありますから、
高額な極度額設定は、さらに、保証人のなり手を減らすことになりそうです。
結果、
「家賃保証会社」「連帯保証代行会社」等に
お金を払って、保証してもらうのが
スタンダードになっていくものと思われます。
保険契約でも、自動車保険の「無制限」項目以外は、
大概上限額が決まったいるわけで、
保証人の保証額に上限がなかったこと自体が、
どうなのか?とも言えるわけですけど、
金額がハッキリしている「借金」の保証人ではない、
賃貸借物件、特に不動産の場合は、
単に滞納家賃だけではなく、原状回復や損害賠償等々、
予め決められない損害が発生する場合も多々あるわけで、
貸主からすれば、「全部払ってほしい」という気持ちも
わからないではないですが。
誰もが、きちんと家賃を払ってくれれば、
問題はないわけなのですが、
やはり少なからず、払えなくなる人はいるわけで。。。
いずれにせよ、今後皆さんが、
やむにやまれぬ理由で保証人になることがあった場合でも、
最悪の場合の上限額が明確になる、ということです。
どうしても、「上限額」が額面として書かれると、
その額を保証しなければいけないように見えますが、
保険契約と同じで、あ・く・ま・で「上限」ですがら、
実際の負担は、損害の額まで。
また、もし、保証人になる際に、
極度額のかかれていない保証人承諾書への記入を求められたら、
例えハンコを押しても「無効」になるので、
安心ですね?!
但し、あくまで今年の4月以降の場合ですけど。
施行が近づくにつれ、
今後マスコミでも取り上げる事が増えると思われる話題ですが、
不動産業界としての具体的な方針が、
どのような形で、いつ出されるのか、出されないのか、
大変気になってます。