元山形県民にしてル・グレンファンであるところのカサマでありますが、新年早々、いきなり衝撃を受けたですよ。
2019/01/17
【ル・グレン陥落】
まさかのシベール倒産。
夕方この時間に速報とは。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4539.html
<引用>
倒産速報(帝国データバンク)
洋菓子・パン製造、同小売、レストラン経営
JASDAQ上場、東北では「ラスクフランス」で有名
民事再生法の適用を申請
TDB企業コード:160091313
負債19億6500万円
<引用終わり>
シベールと言えば大学時代に熊谷社長には授業などで大変お世話になったですよ。
あの不況期、後に「就職氷河期」と言われる時代にわざわざ宮城大学までいらっしゃって、ゲスト講義の他にインターンシップ受け入れ、そして「今後会社は首都圏進出を含め戦略的に投資したいと考えている。是非とも事業構想を学んだ宮城大学生を採用したい」と、非常に積極的だったと記憶しております。
「なんだか東北のパン屋が、ずいぶん大きな話だなぁ」といぶかしがったのですが、その後懇親会で色々お話しした際、非常に手堅い経営観念をお持ちで、大変感銘を受けた記憶があります。
まさかあのシベールが。
まあ、もっとも、私は「是非とも採用したい」言われたので試しにエントリーシート出したら、結局音沙汰なくて不採用になったのは20年前の良い思い出です。
(50社受けて全敗した。そういう時代。)
2019/01/20
【シベール続報、気になる点】
シベール続報。驚き桃ノ木、名古屋のオールハーツが買う見込み。
https://www.kahoku.co.jp/tohokun.../201901/20190120_52032.html
<引用>
<シベール>名古屋のパン・菓子会社「オールハーツ・カンパニー」が支援へ
民事再生法の適用を申請したジャスダック上場の洋菓子メーカー、シベール(山形市)に対し、名古屋市のパン・菓子メーカー、オールハーツ・カンパニーがスポンサーとして支援する方向で両社が調整を進めていることが19日、関係者への取材で分かった。
オールハーツ・カンパニーは2002年創業で、「ハートブレッドアンティーク」などの屋号の店舗を全国に展開している。
<引用終わり>
オールハーツのCEO田島慎也氏は、いわゆるスイーツベンチャーの走りで、36歳の気鋭の経営者。2004年に20歳で奥さんとパン屋を始めてわずか15年で直営店100店FC店30店の日本最大のパン&スイーツ専門グループを作った、立志伝中の人ですな。
世界最大のグループにすると公言する、パン職人でありながら典型的なベンチャー起業家で、仙台にはいないタイプの、実に名古屋的です。
https://www.ceo-vnetj.com/.../%E7%94%B0%E5%B3%B6%E6%85%8E%E4.../
フランチャイズショーで大々的にデビューし、へーと思って見ていたのですが、いつの間にか30店・・・。今後はFC展開による事業拡大をするのかなぁと思ったら、去年の京都のラミデュパンの買収以降、M&A戦略に切り替えたのかな?
気になるのは、ここ5年で売上が3倍になっていよいよ100億に届くかという「急すぎる」成長のこのタイミングで、シベールが倒産した後に格安で空白だった山形と仙台の20店舗をゲットした動き。いや、支援するつもりなら、なんでもっと先に買わなかったし?と思って、気になったので官報から決算書情報をゲットしたところ、前期は(大赤字のラミデュパン買収前ですら)固定長期適合率が120%を越え(通常80%、100%以上は危険水域)、売り上げ規模に対して純利益が4千万しか出ていなくて、利益剰余金に至っては1億8千万円しかない。
これで売上26億のシベールを買うとは、まさか・・・
(以下コメント欄)
そもそも、シベールほどの会社と倒産時に「1社と交渉中」だったこと自体がきな臭い。
同業だけでなく、投資会社や他のM&Aの対象になっても良いはず。となると、シベールの状況は報道されているよりもひどく、支援表明先も実は単純な販路確保とM&Aによる節税以外に目的がありそうだ。目的は工場施設?そもそもオールハーツの資金繰りもそれほど良くないゆえの節税?
・・・
お金周りを見て疑問に思ったら「ヒト」を見るのは、経営の鉄則ですな。シベールの役員構成を見たら驚いた。
http://www.ullet.com/%E3%82%B7%E3%83.../%E5%BD%B9%E5%93%A1
(ullet様ページより転載)
代表取締役がメインバンクで4,9%の大株主の山形銀行出身で、6人の取締役のうち2人が山銀出身で、生え抜きが一人しかおらぬ。
これだけ山銀と密接な会社だと、メインバンクが頑張ってシンジケートローン(協調融資)をかけそうなものですが、他の銀行が乗らなかったとなると、これはマサカ・・・
・・・
そして最初のP/Lに戻る。
売上の落ち込みペース以上のこの異様な赤字転落は、報道されているものと他の理由があるように予感させられる。これ以上は財務諸表等の情報から特定するのは無理なので、是非とも経営に詳しい河北記者さんに深掘りしていただき、継続的に報道して欲しいところ。
・・・
あんまり公に文字で残すと色々アレなので、これ以上
「どういうことだってばよ!」
という方は、カサマを飲み会に誘ってくれると、「飲み屋の放談」ということでカサマの推測が聞けるらしいぞ!
名取のビール園なら、さらに良しだ!
レッツ、カサマをビール園!
・・・
「シベール生え抜き」の役員が殆どいない件。実は私は個人的に思い出があり、それはいずれ。
(補足)
そしてその「個人的な思い出」。
最初の1/17の投稿の時に、創業者の熊谷さんと2001年ごろにワンノブ学生としてお会いしたことがあったと投稿していました。当時、まだようやく90年代のアレが「バブル」だったと総括が確定した時代ながら、仙台でもっとお店や工場を作りたいとか、首都圏に進出したいとか、さらにはJASRAQに上場を目指すだとか、えらい壮大な構想に驚いた記憶があります。
そして自分が経営者になってよくわかるのが、とにかく若くて優秀で才気があって未来がある人間がとても眩しく見えるとともに、それに一種のルサンチマンを感じるタイプと、その人間を使ってみたいというタイプと、二極化すると思うんですね。短いコミュニケーションとはいえ、熊谷社長(当時)はまさに後者のタイプだったと感じるとともに、ただ一つ気になることをおっしゃったんですよ。
「うちの会社も、ようやく『大卒』を入れられるぐらいになった」
そのとき、あれれれ?「大卒」とは?と意外の感があり。自分たちが大学生だと「大卒」であること自体は意識したことがなかったので、よく覚えております。その場では「君たちのように事業構想を学んだ人間に入ってもらって、是非ともシベールの次世代を担ってほしい」みたいなことをおっしゃっていて、最初はいわゆる社交辞令かなと思っていたのですが、徐々に子供心にも「これは本音だ」と気付いたのです。シベールは経営人材が育っておらず困っているのだ、と。
今回、改めて倒産時の役員構成を見ると、結局あれから18年がたっているにもかかわらず、生え抜きの取締役は生産一筋だった方が製造部門の代表という形で一人だけ名を連ねているだけで、結局経営人材を育てられなかったということ。それは山形・宮城という地方の人材不足の限界だったのか、あるいは会社の組織開発の限界だったのか。
https://www.nenshuu.net/corporation/contents/corporations.php?security_code=2228
一つヒントになるのかもしれないのが、上記「年収ガイド」様のサイトによると上場企業にもかかわらず勤続10年の30代半ばの年収が300万円、偏差値31.5で、上場企業3619社中3611位、食品業界最下位であり、山形県内企業でも最下位。
これを見て、最近流行のブラック企業だなどと言いますまい。大卒採用を始め、上場企業になったのに四半世紀変わらぬ給与体系。これはHRM(Human Resource Management)の失敗。大卒人材を求めていた、18年前のあの20世紀初頭。あの時すでに、終わりは始まっていたのだ。そして、あの18年前にプレゼンした大学生の中にはシベールを救う者はおらず、その同世代の人間で専門学校卒の若き名古屋の起業家が創業40年以上のシベールを買う皮肉。
熊谷社長は私の人生にとって最初に現役で実在の人物として出会った、高潔で有能な経営者。あのシベール、あの熊谷社長をもってしても、組織開発すなわちHRMは至難なのかと思うと、東北の企業の真の弱点を見た気がして、この地の行く末の暗雲に頭を抱えるのでした。