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小さなギモン調べてみました!

建築・不動産から言葉のトリビアまで、仕事の中で見聞きした小さなギモンを調べて報告していきます。

2015年2月のアーカイブ

一昨年UPした「換気の話」は、色々と反響をいただき、某TV番組で紹介された際には「換気マスター」の称号までいただき、恐縮しきりでした。

で、その後、続きはないの?的なお話もいただいていたのですが、元々そのつもりで書いていたわけでもないので、なかなかきっかけがなかったのですが、今回はやっと続編を。

そもそも、密閉性の高い現代の住居、特にマンションなどで、湿気をこもらせないためには、換気が大切ですよ、でも正しい換気をしないと換気になりませんよ、というのが前回の趣旨でした。

今回、続編を書く気になったのは「インフルエンザ対策で加湿しましょう」という記事を目にすることが増え、「加湿する事」と「換気する事」との調整をどうとるべきか、考えさせられたからです。

適切な換気を行い室内の湿度を不必要にあげないことは、いつの場合も重要で、結露対策にもカビ対策にも一番なのですが、「インフルエンザ対策」となると、ちょっと考えなければ、ですね。

そこで、「加湿する」にしても、こんな点には注意した方が良いですよ、的な事をまとめてみたいと思います。

■湿った空気の動き

で、この話をする前に解いておかなければならない誤解がひとつ。

それは、「湿った空気が重い」という思い込み。

そんな思い込みはしていない、という人もいるかもしれませんが、
イメージの話として、乾燥した空気と湿った空気では、湿った空気の方が重いような感じがしますよね。

だって、空気+水(水蒸気)になっているのが湿った空気なのですから、同じ空気の量なら、当然そこに水蒸気も足されればその分重くなる、と。

でも実は違うのです。

「アボガドロの法則」というのがあります。アボカドではありません。

これは、「同一の圧力・温度・体積である気体中に含まれる分子の数は、気体の種類に寄らず一定である」という法則です。

遠い昔に化学の授業で習った人も、そもそも習った記憶がない人もいるかもしれませんが、とにかく気体にはこの法則があるのです。

空気は基本的に4:1の比率で窒素と酸素が混合したものです。
(それ以外の成分もありますが、相対的に微量なので、便宜的に無視します)
なので、わかりやすくここに窒素が16個と酸素が4個の空気があるとします。
(以下、下図参照)

それとは別に体積やその他の条件が変わらない状態で、そのうちの半分が水蒸気に置きかわった空気を考えます。
(厳密には違いますが、イメージとして湿度が50%になった感じです)

そうすると、その水蒸気を含んだ空気は、アボガドロの法則により、体積等の条件が同じならば分子の数は変わらないので、窒素が8個、酸素が2個、水(水蒸気)が10個のものになるわけです。

で、それぞれの分子量(便宜的な重さ)を合計してみると、実は水の分子は窒素や酸素よりも軽いので、水蒸気を含んだ空気の方が総量としては軽くなることがわかります。

あくまで「気体」の状態で「同一の体積・温度・圧力」での話なので、「水の方が軽いなら、なんで空中に浮かんでないんだ?」という疑問は当てはまりません。そこのところは誤解の無いように。


また、「暖かい空気」の方が「冷たい空気」よりも軽いことはご存知ですよね。

これをまた化学的に説明するとめんどくさいので省きますが、簡単に言えば、物質は温度が上がるほど分子の活動が活発になり、一つの分子の行動範囲が広くなるので、気体でいえば体積が大きくなります。

分子数は変わらなくて、体積が大きくなるのですから、同じ体積で比べれば、存在している分子数は少なくなり、結果的に暖かい空気の方がその中に存在できる分子量(重さ)が少ないので軽くなるわけです。

(全然、簡単な説明になっていない気もしますが・・・)


あまり良い例えではないですが、6畳一間に子供がいるとして、冬にこたつで静かに読書する分には4人ぐらいいてもOKですが、夏に元気良く走りまわるには一人でも狭いくらいですよね。

でも体重の総和は、当然一人の方が少ない。そんな感じでしょうか?

一定のスペースにいる分子の数が減るという事は、(イメージ的には)隙間は増えますので、他の分子が入り込みやすくなるわけで、結果、抱えられる水蒸気の量は相対的に増えます。
(当然、先の図のように、水蒸気が入り込んだ分、酸素や窒素は減ることになるわけですが。)

つまり湿度が上がる。(上げることができる=飽和水蒸気量が多い)

もちろん入り込む他の分子は、水蒸気に限ったことではないので、その他の空気を汚すガスも同じことなので、温度が高いほど、空気は汚れやすいともいえますが。

分かるような、わからないような話で恐縮です。

が、つまり、とにかく空気は、

「暖かいほど、湿っているほど軽くなる」

ということを了解していただければ。

そこで、やっと本題です。

ということは、加湿された空気は上に登っていきます。ましてや暖房された部屋であれば、特にそうです。

つまり、

加湿器を使う場合、高い位置においても部屋にいる人への効果は薄い

という事になります。

最近の高性能な加湿器は、湿度センサーが内蔵されていて、加湿量を調整する製品が多いそうです。
でもその製品は、当然本体に湿度センサーが付いていますから、加湿器を置いた場所付近の湿度を検知して、加湿をすることになります。
人がいる部屋では、床に近いほど湿度が低く、天井に近いほど湿度が高くなる傾向にありますから、床に置くと加湿器ががんばりすぎちゃうことも考えられます。

してみると、部屋の中にいる時に、人の顔がある高さで、適度な湿度が保たれるようにするのが大事なので、加湿器は座った顔の高さ位の位置がベストのように思います。

但し、先の話の通り、加湿された空気は天井の方に上がっていくので、天井付近は湿度が高くなり、その空気が窓際で冷やされながら下降すれば当然結露しやすくなります。

そこで、「換気」です。

加湿器を使用するときも「換気扇」をつけることは、過剰な加湿を防ぐうえでも重要だと思います。

もうひとつ合わせ技で考えたいのは、「空気の撹拌」です。

先に書いたように、室内の空気は場所によって、湿度も温度も違うので、これを換気と合わせサーキュレーターや扇風機等で混ぜてやることで、室内の空気環境を均一化してやるのも効果的だと思います。

■暖房器具の出す湿気

例えば「石油ファンヒーター」ってありますよね。あれは中で灯油が燃焼していて空気を温めているわけですが、見えないだけで、かなりの水蒸気を発生しています。

計算上だけでいうと、灯油1リットルが燃焼すると、水も1リットル強発生するそうで、この分室内の水分量は増えるわけです。

この時、室内の湿度は当然に上がるかと言えば、単純にそうはなりません。

そもそも「湿度」と一般に言われるものは「相対湿度」であって、ある気温での飽和水蒸気量(その空気が抱えられる水蒸気量の上限)を100%とした時の水蒸気の量でから、気温が上がっていけば飽和水蒸気量の上限も上がっていき、相対的に湿度は下がることになります。

ただ、ここで勘違いしてはいけないのは、「その室内に存在している水分量は増えている」ということです。

なので、寝る前に暖房器を止めて、室内の気温が下がると、今度はどんどん湿度が上がり、朝起きたら結露がすごい、という事になってしまうわけです。

燃焼しない暖房器具、例えばエアコンやハロゲンヒーター等の場合は、水蒸気を発生していません。でも室温は上がります。そうすると先の話の通り、湿度は相対的に下がります。

多少乱暴な話になりますが、あえて言うと、

「湿度が下がる」ことと「乾燥している」ことは、単純にイコールではない

ということを理解する必要があります。

大分長くなってしまいましたので、一応まとめを。

①湿った空気は上に上がるので、やはりうまく換気や空気の撹拌をして、過剰な加湿にならないようにする。

②適度な湿度を必要な場所で保つためには、湿度自体が体感しにくいものなので、湿度計を使って、確認しながら調節した方が良い。

というのが、私の意見です。

湿度計.JPG

100均の店でも湿度計は手に入ります。
左は温度計兼用の物、右は湿度計専用のものです。
値段が安い分、それなりの誤差はあり、あくまで目安程度だとは思いますが、それでも無いよりは役に立つと思いますよ。

この記事を書いた人

斉藤 一則

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