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小さなギモン調べてみました!

建築・不動産から言葉のトリビアまで、仕事の中で見聞きした小さなギモンを調べて報告していきます。

2010年10月のアーカイブ

もう誰もこの話についてきてくれていないようですが、
今回も前回からの話の続きです。

「くどくて長い」とのご意見も頂いたので、今回は短めに。

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今回は、鍵」と「鍵盤」、

「Key(キー)」と「Keyboard(キーボード)」の関係に関してです。

そもそも、「錠」とセットで使う「鍵」と、
ピアノやパソコンの「鍵盤(キーボード)」に使われる「ケン」と呼ぶ「鍵」が、
どうして同じ文字で表現されるのか?
ということなんですが・・・

色々調べてみると、結局鍵盤楽器の起源に遡ることになります。


で、鍵盤の付いた楽器で最も古いものが何か?と言うことになるのですが、
どうやらいわゆる「パイプオルガン」がその元のようです。

と言っても、現在のようなものすごく巨大なものではなく、もっと小さなものではありますが。

パイプオルガンはパイプに空気を送り込むことによって音が出ます。
その空気の出入口をふさいでおいて、音を鳴らす時だけ空気を送り込む
その弁のようなものを「Key」と呼んだようようです。

ここで言う「Key」は「鍵(かぎ)」ではなく、「関門」の意味のようですが、
パイプの出入口を開閉する部品と思えば、
「鍵」というのも、なんとなく頷けます。

これが後にこの「Key」を動かす仕組み全体を、
最終的には、その仕組みを動かす部分(今で言う鍵盤)も含めて、
「Key」と呼ぶようになった、ということです。

でも、パイプオルガンが出来たのはヨーロッパ起源ですから、
言語としてはおそらく「Key」という英語ではなかったはずです。

で、調べてみると、
現在のピアノのご先祖様にあたる楽器に「クラヴィコード」という楽器が有りました。

これは、箱の中に「弦=Chord(コード)」を張り、
その弦を「鍵=Clavi(クラヴィ)」がたたいて音を出すと言うものです。

「鍵=Clavi(クラヴィ)」は、前回の「コンクラーベ」の語源のところでもご紹介しましたが、
ラテン語の「clavis (=鍵)」が語源の言葉ですね。

実は英語でも「鍵盤」は、「Keyboard」以外にも「clavier」とも言うのです。

またラテン語の「clavis」には「鍵」とともに「鍵の番人」とか「門番」、「関門」の意味も有りました。

どうやら、このあたりが元のようです。

パイプオルガンのパイプの空気をせき止めるところが「Clavis」で、
そこから派生して「Clavis」を動かす部分=鍵盤も「Clavis」となり
これが他の「クラヴィコード」や「チェンバロ」、後の「ピアノ」にいたるまで
同様の鍵盤装置を全て「Clavis」と呼ようになった、ということのようです。

他にも、鍵盤楽器の「鍵」(ケン)の形がもともと当時の「鍵」(かぎ)に似ていたから、
という話も有りましたが、パイプオルガンの「Clavis」起源の方がもっともらしいと思いますので、
私としては、こちらの説を採用したいと思います。

とすれば、
これが一般的な英語に訳されたときに、
ラテン語の起源的に、「Keyboard」になったのもうなずけますし、
日本語になった時に「鍵盤」と訳されたのも納得が行くところではないでしょうか?


パソコンのキーボードなどは、その前の時代のタイプライターからして、
指で扱うその形態がピアノの鍵盤に似ていたからともいえますし、
「Key」の意味を、鍵盤がそうであったように、その先のアクションを起す
スイッチ的なものの意味として捉えれば、充分納得です。

ということで、結局

「鍵盤」の「鍵」(ケン)も、元は(広義の)「鍵」(かぎ)だったわけですね。

しかし、ここで一つギモンが生まれます。

「錠」をあける「鍵」は「かぎ」で、
「鍵盤」の「鍵」は何故「ケン」なのか?

思うに、これは「物体」と「文字」と「(音声としての)言葉」の問題なのでしょう。

「錠」をあける「鍵」(かぎ)は、
その用途と日本語としてあった「鉤」の形態との結びつきで「かぎ」となり、
「鍵盤」の方は元言語の字義の訳として先にこの「文字」が当てられ、
「ケンバン」と読まれるようになった、と。

まさしく、音訓の違いと言うわけですね。

これでやっと、§1の④のギモンは解決しました。

次回は「錠」の方を掘り下げてみたいと思います。

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ちなみに、皆さんは「オルガン」とだけ言われると、
昔学校の教室にあった、机みたいな形のものを思い浮かべませんか?

実は、世界的な認識では、「オルガン」とだけ言うと、
「パイプオルガン」の方を指します。

学校にあった机みたいな奴は、
「リードオルガン」と呼び区別します。

日本と世界では認識が逆なのですね。

クラヴィコード.jpg

これが、

「クラヴィコード」という楽器です。

フタを閉めたらただの机ですね。

前回、問題が解決しないままとなっているこの話。

あいかわらず、解決はしてないのですが、ひとまず「鍵」に関してもう少し調べてみましたので、
今回はそのご報告です。

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今回、「鍵」の文字に関して調べてみましたら、以下のような記述に行き当たりました。
 

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かぎ〔鍵・鉤〕・くぎ〔釘〕《名詞》

【語義】 「鉤」上古音「kug」,字義=とめがね(留め金)。
【語誌】 「鉤」の上古音「kug」を「kug-i」と読んで「くぎ」という日本語が派生し,
      また,訛って「kag-i」と読んで「かぎ」という日本語を派生した。
【語義】 「くぎ」は木材を固定する“とめがね(留め金)”であり,
      「かぎ」は扉などを固定する“とめがね(留め金)”である。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 

ココで判ることは、

①「鍵」=「鉤」=「釘」で、元は同じ。
②「かぎ」は”留め金”のことである。

と、いうことで、つまり、鍵」は金属製であると言うことです。

 

「錠」「鍵」の古い形を考えると、
いわゆる「閂(かんぬき=門の内側に横棒を刺し通して開かなくするアレです)も
その仲間だと思うのですが、
「閂」はほぼ木製ですから、「鍵」という文字で表すものではないわけですね。

 

前回の話でチョット触れた、
世界最古の錠といわれている「エジプト錠」も
「鍵」として使う道具があるのですが、
もちろん木製ですから、厳密には「鍵」と表記が出来ないことになります。

(もっとも、現在の意味としては木製でも金属性でも「鍵」は「鍵」ですけど。)

 

ようするに、

鍵」という文字は、
金属製のものが出来て初めて使われるようになった文字

らしいということです。

 

しかも、元々は「鍵」ではなく「鉤」の文字が使われており、
「鉤」の「句」は「まるまっている・曲がっている」を表しますから、
「鉤」は金属製で曲がっているものを表現する文字であり、
「はり」とも読むので、「釣針」も本来は「釣鉤」と表記すべきものらしいです。

 

”「”の名称「かぎ括弧」も文字では「鉤括弧」ですし、
「かぎ型に折れている」等に使う90度に曲がっている状態を示すのも
「鉤型」と書き、「鍵型」や「鍵括弧」ではありません。

 

実際、「鍵」がまっすぐな棒状だったら「鍵」としての役目は果たしそうもないですから、
とにかく金属製で曲がっているものを「鉤」と呼び、

その中の特に「錠」とセットになって使用するものに
「鍵」の文字を当てたのではないか
、と。

 

また、「鍵」の文字の旁(つくり)にあたる「建」は、
文字の意味としては「たてる」の意ですが、
「鍵」に使われている「建」は、音を表していて、
そもそもは「閉じる」を意味する「禁」の音からきているとの話もネットには出ていました。

 

してみると、

材質・形状からきた「かぎ=鉤」という言葉と
意味としての「鍵」が結びついて、
「鍵=かぎ」となった

のではないかという気がしてきました。

 

つまり
「かぎ」と言う言葉は、「錠」とセットではなく

もともとあった「かぎ」という言葉の意味に
後に伝わった「錠」とセットになった現在の「鍵」も含めるようになり、
それに「鍵」の文字をあてるようになったのではないか、
ということです。

 

とすれば、「鍵」はもともと道具ですから、
それ自体を開けたり閉めたりするものではないことは明らかで、
現代の「鍵を開ける」等の表現は、
単に「錠」「鍵」の区別が曖昧になり、
混同された結果であるのは間違いないようです。

 

・・・・・少しだけ、わかってきたような気がします。

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次回には、さらに、この「鍵」を「けん」と読む方の意味合いについてや、
英語で言う「キー」の意味の幅についても調べてみたいと思います。

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そういえば、この話を調べている中で出てきた「鍵」がらみの小ネタがありました。

●コンクラーベ

数年前にバチカンで次期法王を決めるための儀式というか会議の名称が「コンクラーベ」でした。
この言葉、ラテン語の「con (=with)」「clavis (=鍵)」が語源となっており、
鍵のかかった一室に入り、外界からの接触を断って選挙することに由来するそうです。

 

●鎖骨

鎖骨は英語で「クラビクル」と言い、
これはラテン語のクラーウィス(鍵)が語源のようで、
Clavis(腱、カンヌキ)には「小さな鍵」の意味もあるそうです。
一説には、ローマ時代の鍵の形が鎖骨と似ていたためだそうです。


 

この「鎖骨」の話、ちょっと興味深いものが有ります。
「鍵」の形に似ていた骨が「鍵骨」ではなくて「鎖骨」と訳されているところが。
これって、前回の話の『「錠」はもともと「鎖」文字が使われていた』というのと、
何か関係があるような無いような・・・

 

まだまだ、謎はつきません。
もう「小さなギモン」どころではなくなってきてしまってるようなカンジがしないでもない・・・・

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おまけ

先日、さる集まりで『「合コン」って、何の略だ?』と言う話になり、
『「合同コンパ」でしょ』というところまでは良かったのですが、
じゃぁ、『「コンパ」って何?』ということになって、結論が出ませんでした。

 

調べたところ、
ドイツ語で「仲間」を意味する「Kompanie
若しくは英語の「会社、会合」を意味する「Company」に由来しているそうで、
明治時代に学生の隠語として「コンパニー」の発音で使われるようになり、
後に略されて「コンパ」となったそうです。

 

なので、本来は男性だけや女性だけの集まりでも使われたようです。

 

いやぁ、コンパ」が「会社」と同じ意味だったとは。
 

最後に。
最近の私の頭の中は、というと、こんなカンジです・・・・・・ DSCN3474.jpg

 

この記事を書いた人

斉藤 一則

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