先日仲間内で、閖上から船でカレイ釣りに行ってきました。
正直なところ、釣りに関しては素人なので、釣果の程は知れていますが、
それでも多少は釣ることが出来ました。
過去にも何度か連れて行っていただいたのですが、
その度に波と天候に嫌われ、
船酔いしながらのキツイ船釣りでしたが、
この日は初めて波も穏やかで、
のんびりと釣り糸を垂れることができました。
で、例によって、フト、疑問に思ったのが「釣り」の文字に関してです。
(「釣り」自体のことではないところが、自分でもどうかと思います)
建築用語でも「つり○○」と言う言葉は、
「吊戸」「吊元」「釣床」「吊束」等々結構有りますが、
その「つり」の字を「釣」と書くか「吊」と書くかが、結構あいまいです。
どこに区別があるのだろうか?
と、いうことで調べてみました。
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ポイントは、どうやら、漢字の成り立ちに有るようです。
「釣」は「金+勺」で、「勺」には、「凹んだもので何かを汲み出す」と言う意味があるそうです。
「勺」の文字の中の「、」は、汲み出された物を表すそうです。
で、「汲み出す」というのは、ものの中から一部を抜き取って高く掲げる意味ということで、
「釣」とは、金物の針で「水の中から魚を抜き出して高くかかげる」
という意味なのだそうです。
つまり、釣られた「魚の側から見たの状態」といえますね。
一方「吊」の方はと言いますと「口+巾」で、「巾」は「布(ぬの)」を意味し、
「布で何かを吊り下げる」意味の文字だそうです。
つまり釣りで言えば、竿から吊り下げられた「糸や釣り針の側から見た状態」
と言えそうです。
日本語としての「つる・つり」は、何かを吊るすと言う意味で、
その意味では「釣り」も「吊り」も同語源なのですが、
漢字が伝わってきたときに、その状態で使い分けが出来たようです。
してみると、
「吊束」(つりづか・・・間口の広い開口部にある鴨居を中心で吊り上げるための部材)
等はまさしく「束」の側から見て「吊束」と書くべきですし、
「釣床」(つりどこ・・・天井部分を一部下げることで、床の間的な使い方をする空間をつくったもの)
等は、持ち上げられた「床の間」の側から見て「釣床」と書くのが正しいと言うわけです。
とはいえ、結構微妙な話で、厳密にどちらが正しいのか判断が難しいものが多そうですし、
大方、魚を取る時だけ「釣」で、それ以外は「吊」としといた方が無難な気がしますが、
日本語の難しいところは、既に派生してしまった言葉や定着してしまった表現があり、
完全に法則化できないところですよね。
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ということで、ここまで調べて、一番気になってしまったのが「お釣り」です。
商品を買って支払った額が代金より多かったときに返金される、あの「おつり」です。
もともとは「釣り銭」ですが、これが何故「釣り銭」と言われるのかには、
私が調べた範囲では3つの説がありました。
①昔の商店では、お釣りを出すのに軒先にカゴをぶら下げて小銭を入れておき、
スムーズに対応できるようにしていた。文字通り「小銭」を「釣って」いたので
「釣り銭」という。
→ 「銭」の側から見れば、高く掲げられていますので、「釣」の字を使うのも
頷けるような気がします。
でも、こういう商習慣って、そんなに昔からあったのでしょうか??
②高額な紙幣・貨幣(小判)を預かった後に「銭」の方のみを相手方に移すので、
「移り(うつり)銭」が変化して「つり銭」となり「釣り」の字を充てた。
→ちょっと、無理があるような気がしますが、一部の辞書にも載っているそうです。
もしそうなら、「つり」の音に対応する文字として「吊り」よりも「釣り」の方が
一般的だったということでしょうか。
③商品の価値と金額が「釣り合う」ように「銭」を渡したので「釣り銭」という。
→そもそも、「つりあう」に「釣」の字を使うのがどうしてなのかが、気になるところです。
「つりあう」と言う言葉は「天秤ばかり」から来ているという話があるのですが、
棒の両端に皿を吊り下げる方式ならば、「吊り合う」の方が正しいカンジがするんですよね。
結局、結論は出ていないのですが、個人的には①の説が気に入っています。
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建築とは大分関係のない話になりました。
でも、このブログを読んでくれている人にとっては、
そろそろ、「いつものことでしょ」 と、言われる時期かと。
ぜひ、そういう御気持ちで読んでいただければ幸いです。
写真は、先日のカレイ釣りの時のものです。
(写っているのは私ではありません。)