仙台の商業を語るうえで割とメジャーな都市伝説、「仙台に地下街がない理由」シリーズですが、河北新報より驚きの報道があったですよ。
何故かこの時期に。
2019年6月13日
【衝撃の仙台の秘密】
こ、これ本当の話だったのか・・・。
<河北新報2019年6月13日「地下街のない街仙台 構想浮かんでは消え半世紀」>
「実は、あの殺風景な仙台駅の東西地下自由通路には驚きの仕掛けがある。JRと市地下鉄の間の約200メートル区間は壁が薄く、くりぬけばいつでも店舗が設営できる構造になっている。 市都市整備局の幹部は『将来、地下街開発の機運が高まったときに備え、可能性を残している』と明かす。」
この話、もう18年以上前だと思うんですが、私がまだ大学生だった地下自由通路開通時、(お恥ずかしながら)2ちゃん●るの鉄道板だったか運輸交通板だったか地方都市板だったかで流れていた噂だったんですね。
つーことは、あの書き込みはホンマに「中の人(関係者)」が書き込んどったのか・・・。
確かかなり具体的でリアルな話もあって、実際に地下街にしても坪単価が5万円超えてしまうので地元勢は入れず、一方で市が非公式にパルコやハンズなどにヒアリングしたものの、1000平米ぐらいでは中途半端で採算性が取れないので難しいと判断しただとか、そういう話。
何しろ20年近く前の話で、当時の担当者がいるかどうかわからんけど、あれも与太話だと思っていたら、もしかして本当だったのか?
今回の報道、割といろいろ影響があるのではなかろうか。
2010年6月14日
【実測なう】
ああ、こりゃあ地下街を作ったとしても、商業施設として致命的な弱点ができてしまう。
だが「両側」に更なる奥行きを「繋げ」れば、あるいは・・・。
<補足>
「商店街の商店主が反対運動をした」とか「街のフィクサーたちが政治力を使って市の動きを封じた」とか、もう少しまじめだと「1980年の静岡駅前地下街爆発事故以降、地下街の安全性について議論があり、規制が強化された背景もあり、仙台に限らずそもそも本格的な地下街がそれ以降30年地方都市では作られていない」とか、色々人々の想像を掻き立ててきた「仙台地下街がない伝説」。
ないものの理由を考えるのは、妄想の範囲が広がりやすくて楽しいので、ついつい想像を掻き立ててしまうわけです。
そんなわけで、多少は実証的にやろうということで、Google先生だけではちと正確性に欠けるので、現調してみたですよ。すると予想通り、何者かの陰謀だとか以前に、「こりゃ無理だ」という大人の事情が。
青い部分が地下街想定。延べ床面積が2,910平方メートルにしかなりません。
この大きさは、ちょうど長町駅の高架下に2015年にできた「tekuteながまち」とほぼ同規模。tekuteは延べ床面積3,000平方メートルで店舗面積が約1,600平方メートル。店舗数は16店舗にすぎません。少なッ!この規模ですと、いくら駅直結だとしても魅力的な売り場にするテナントミックスは、困難を極めるでしょう。
(tekuteながまちレイアウト。JR東日本東北総合サービス株式会社のプレスリリース資料より抜粋。)
この大きさで、既存の商店街を脅かすとか、あるいはフィクサーが市に圧力をかけるほどの面積に思えません。ちなみに近くの「中央1-10-1」の公示価格は驚きの360万円/平米で東北最高価格。多層階にしないととてもじゃないけど成り立たなそうで、実質1階分しかない地下街はそれだけで不利になりそうです。長い時間と工期をかけて作った、たった3千平米の賃料はいくらに設定になるのでしょうか?
超テキトーな計算ですが、仮に最高公示価格の半額で、札幌のアピアの建設費が200億円という怪しいサイト情報があったのでそれを参考に20年で建設費回収すると計算すると、こんな感じ?
坪単価84万円キタコレ!
10坪のお店なら、家賃が月額70万円以上だ!ちなみに工費、先日完成した仙台駅東西自由通路の工費が28億円らしいから、こんな安いわけないよね!(藁)
仙台に地下街がなかったのは、どうも単純に経済合理性が背景にありそうです。
一方で今回報道されたこの「東西地下自由通路」の「実はくり貫けます」エリア。北側には最近地権者の整理がついたと報道された「旧さくら野」、南にはただいま絶賛解体工事中の「日乃出ビル」と暫定複合商業施設「EDEN(エデン)」が。
もしこれらの再開発案件の地下空間も繋げられるのなら?
あれれ~?SPAL地下と連動すれば、突然全国10位圏の、天神地下街に匹敵する地方都市最大級の地下街が生まれるくさいぞ?
なるほど、こりゃあ、駅前再開発関係者の皆さんが、三菱地所の丸の内開発のように自ら音頭を取るのは無理だけど、誰かに音頭を取ってもらいたい感じやも知れぬ。周辺再開発と一体で地下部分で補助金頂ければ、ワンチャンスある可能性が微レ存?
となると、このタイミングでなぜ仙台駅界隈最大の都市伝説のナゾが報道されたのか?いくつかの背景の仮説が立てられそうだ。
(1)本当に、単純に河北新報に読者の純粋な疑問の投稿があった
ほら記事は一応「読者とともに」だし。
(2)駅前の空洞化を心配する河北新報社の「社論」の発露
ほら、直前まで、さくら野の地権者の整理が進んだ件とか、日乃出ビルの解体の記事等で、「仙台駅前の空洞化」を心配する記事が続いておりました故。誰かに発破をかけたいかもね。
(3)さくら野側の再開発関係者による何かしらのリーク
ほら、中心市街地の均衡ある発展とか、言ってられないから。何しろこれだけの面積の再開発となる高い収益性を目指さなければならないから、何なら仙台だけでなく東北中から人を集めたいだろうし、まさに仙台駅前は(以下略)
(4)EDENと日乃出ビル側担当のオリックスグループの方々による何かしらの(以下ry
ほら、中心市街地の均衡ある発展とか、言ってられな(以下ry
隣接するams西武だとかH5とかの地権者も説得し(以下ry
(5)某政令指定都市が地下鉄活性化とからめて何かしらの仕掛けを(以下ry
あんまり駅前の活性化ばかりやると、それこそさすがに各方面からいろいろ言われるし、某極東の政令指定都市が進める街づくり方針的にも若干矛盾が発生するので、やはりここは地下鉄の活性化という大義名分でこ(以下ry
・・・色々妄想を掻き立てる仙台地下街で、まさに100年に一度の千載一遇の好機ッ!と言いたいところですが、ま、センダイ人のいつものこと。地下どころかそもそも地上の地権者の整理もへたくそですから、いつもの通り、地下鉄南北線の台原―旭ヶ丘間の分岐対応設計同様、日の目を見ることはないでしょうなぁ、などと無駄に時間をかけた思考実験をしながら嘆息するのでした。