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マクロの眼

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2017年9月のアーカイブ

石巻・女川界隈で 2017年7月22日(土)~9月10日(日)に開催された「Reborn-Art Festival 2017(リボーンアート・フェスティバル 2017)」

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瀬戸内国際芸術祭や越後妻有の大地の芸術祭など、地方開催の芸術祭が隆盛を極める昨今。

その中で、「アート×音楽×で彩る新しいお祭りを東北に」をキャッチコピーに「食」を差別化ポイントとして打ち出したナイスな視点の割りには、コンセプトのステートメントではすっかり食の要素が取り除かれて、事実、復興途上地域の展示地域では食を楽しむどころかコンビニすらほとんど無く食料調達にも苦労するという今回のリボーンアート。

クリエイティブ系に苦手意識があるカサマとしては、後学のために、様々な締切に追われる中で無理矢理なんとか予定を丸一日空け、タイムズカーシェアの6時間無料チケットを行使して最終日直前に廻ったのでした。

何しろ相手は現代美術=モダンアート。何かしら批判的精神と批評を行うべきであろうと、頑張ったですよ。

2017年9月10日 場所:おしか御番所公園

【リボーンアートの(シロウト)講評】
いよいよ石巻・牡鹿半島を舞台にしたリボーンアートも、終盤になってようやく潜入ッ!
草間彌生先生をはじめ、全国・世界から著明なアーティストの作品が集まった今回のフェス。

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シロウトのカサマが見た中で、最も現代アートとして優れた作品は、広報安全等対策交付金事業(女川)さんによる作品「原子力は明るい未来のエネルギー」でした!

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震災復興を祈念しポジティブな作品コンセプトが多い中、地域課題人類の将来に鋭く斬り込み、この美しい風景に「ベンチ」として溶け込ませる一方、何かの「違和感」を懐かしいフォントで演出する、まさにモダンアートの真骨頂でした。

とりわけ、人々がこれに座ることで風景との一体感が完成され、この「参加するアート」の仕組みは大変秀逸です。
多くの来場者が、隣接する草間先生の作品にばかりに気持ちが集まり、この作品の存在に気づかないほど。

このやうな優れたアーティストがまさか地元にいるとは、仙台・宮城のアートシーンの未来を予感させます。
今回のフェス終了後も引き続きこの作品は永続的に展示されますので、牡鹿半島の先端「御番所公園」にお立ち寄りの際は、是非ともこの作品に参加してください。

2017年9月10日

【リボーンアートフェスティバル2017のナゾ】
本日で終了した「リボーンアートフェスティバル2017」。関係者の皆さん、お疲れ様でした!

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この分野があまり得意ではないカサマ。
だからこそ、これは目に焼き付けておく必要があろう、ということで、昨日急遽予定を変更し、牡鹿半島中心にタイムズカーシェアの無料チケットを行使して廻ったですよ。
しかも、communaのアートディレクターの 長内 綾子 (Ayako Osanai) さんも同行しての解説付き

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というか、参加アーティストや関連音楽ゲリライベントのアーティストなども途中一緒になり、こりゃまるでドラクエのパーティメンバー追加イベントみたいだな、と思った次第。

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いきなりふんどし一枚になって泳ぎ始めたり、度肝を抜かれましたが、さすがは「アーティスト」。
その様子を見て、アートフェスの本質の一部を見たような気がしたですよ。

というのも、以前、四国の有名な「神山町」を視察した際、アートフェスが地域変革(特に「移住政策」)で重要な役割を担ったことを聞いたからです。(エリアマークの下記のブログ参照)
http://www.areamark.jp/blog/kasama/2014/12/facebook-4.html

神山町はかつて、お遍路以外で見たことがない人間が来ると、村民が一斉に警戒して、時には電話連絡網で「変なやつが来ているぞ」と伝えるほど保守的な地域だったそうで。
それがアートフェスをやった結果、「『あーちすと』っちゅう変なやつ何ヶ月も村をふらふらするけど、結構面白いな」ということで「人間慣れ」したらしく、「お遍路」で実は培っっていたおもてなしの精神が再発見され、そこから大きな変革が始まったそう。
アーティストって変人が多いらしいですよ?(すっとぼけ)

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今回被災した地域への「移住」は、今後一つのテーマではありますが、今回のフェスが神山町の時のような効果があったかどうか?カサマは「あったっぽい」と、当日のボランティアや住民などの慣れた様子を見て感じたのでした。

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一方で、今回のフェスは越後妻有や瀬戸内などの他の「田舎」で行われるアートフェス同様、関東圏などの「アートを解る人々」などをターゲットにしており、近隣最大の都市である仙台では広報量が圧倒的に不足していたんですね。
今年は天候にも恵まれていなかったこともあり、当初20万人を見込んだ人出も、30%ぐらいしか達成できていないらしい。しかし、快晴の最後の週末に多くのセンダイジン達が牡鹿半島を回りながら、「え?こんな綺麗なコバルトブルーの浜が牡鹿半島にあるんだ」とか「とか思ったら、貝殻と平たい石だけの、不思議な雰囲気の浜があるね」とか「公園のベンチが電源予算で設置だし、未だに原子力の日を広報するモニュメントが一杯で、この地域は震災後も複雑だね」とか、色々な「発見」「気づき」があった。

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地元の人たちが「変人達が世界中から集まって、なんか面白いもの作って置いてった」という体験
近隣大都市のセンダイジンが「なんか近くに面白いところ案外いっぱいあるな」という気づき

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それが震災の経験と復興のプロセスの中で、どのような「伏線」「種」になるのか?

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現代アートの一つの効果でもある、アートによる社会変革・社会干渉のようなものは、時間をかけて発現するもの。

最後の最後で地元の人々(仙台含む)がこのフェスに参加し、それがどう浸透するか?
むしろ今後の取組にこそ、アートフェスの本質が隠れているように思うのでした。

<補足>

同行した長内女史から言われたのが、このフェスにはマーケッターがいないという指摘で、なぜ地元である仙台をメインターゲットにしなかったのか?という、震災後移住組センダイジンのもっともな疑問なのでした。

今回主導したのは、いわゆる東京のアーティスト東京のプロデューサーで、こうした地方で開催されるアートフェスでは大変珍しく、自治体の役割が非常に小さい点も大きな特徴でした。それは一面では素晴らしい取組とスキームなのですが、案外落とし穴が、実は同じ被災県でも都市のセンダイジンと郡部の津波直撃地域では「復興」に対して精神的な断絶があるという点を指摘する者がいないということです。よっぽど感度が高いか現地に数年単位での長期滞在していないと、東京のヒトではその不都合な真実に気づきにくい。

もしこのアートフェスが、むしろ都市と被災地を結ぶ仕組みとして、ジモティーが地元の良さを再発見する仕組みとして設計されていたら?

いや、そもそも企画段階でもっと地元の人間(センダイジン含む)が関わっていたら?少なくとも、アートフェスの最終日を、センダイジンにとって今や最重要な祭りとなった、70万人が集まるジャズフェスの日程と重ねてしまうような悪手を打っただろうか?

現場のアーティストや運営者の偉大なる献身的な取組と、車で廻った美しい牡鹿半島のあのゼルダの伝説的なワクワク感と、未だに地元宮城の沿岸部で巨大防潮堤が建造される一方住宅はさっぱり建っていない現実に改めて驚いた感情を思い出すにつれ、この芸術祭の無限の可能性と、その実現の難しさに嘆息するある日のカサマなのでした。

この記事を書いた人

笠間 建

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