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ソーシャル・マーケティングって何?

Scan10028.JPGのサムネール画像 私は企業経営(印刷業)に携わる傍ら、いくつかのNPO法人の理事として市民活動に関わりだしてから早いもので10年以上が経過しました。それまでは企業の視点でしか世の中を見つめられなかったのですが、市民活動との出会いによって、地域とのかかわりの中で地域密着型企業としていかに生きていくべきか、様々なヒントをもらっています。

印刷会社は地場産業のひとつとして、長い間地域密着型でその役割を果たしてきました。印刷は文化のバロメーターと言われていた時期もあり、印刷産業は文化や教育、経済など多方面で大きな役割を果たしてきました。しかし、インターネットの出現で状況は大きく変化しています。コストや効果において情報発信のあり方が根本から問い直されているのです。

印刷業としての従来型の事業モデルが行き詰まりを見せています。地域密着と言ってはみても、「本当にクライアントの懐に飛び込んで来たのか?」と問われると、表面上のお付き合いがいかに多いかということに気づかされました。つまり、クライアントのことがよく分かっていない、どんな事業に力を入れようとしているのか、どんなところに課題を抱えているのか、よく分かっていない。これでは密着どころか、地域に「あるだけの会社」と思われても仕方ない、と感じて悶々としていました。

「顧客の先にいる顧客を見なさい」ということがよく言われます。例えばある商品を作っているメーカーと取引している印刷会社であれば、実際にそのメーカーの商品を日常使っていてどうなのか、メーカーに対する消費者のイメージはどうなのか、マニュアルは使いやすいのか...。そういうデータをメーカーにフィードバックすることで、商品開発に活かしてもらったり、そのイメージに沿ったパッケージや商品パンフレットのデザインを提案したり、という循環が生まれてきます。しかし現実はメーカーや広告代理店、調査会社のほうがそういったリサーチは長けていたり、地方のメーカーではそこまで調査や商品開発にお金を掛けるところが少なかったりで、ビジネス的にはなかなか難しいところがあります。

当社では、ここ何年か「ソーシャルマーケティング」という手法で新しい事業開発にチャレンジしています。ソーシャルマーケティングは、今までの「売らんかな」的ものではなく、社会公共志向のマーケティングとして、従来の「企業と顧客」の2者の間に「生活者」という視点を加えているのが特徴です。現在は消費者の利便性だけを追及していくことで環境や社会面で様々な弊害が出てきていますが、社会全体に有益な製品やサービスを提供すべきという考えのもと、社会的責任を重視した事業展開、地域の課題を解決するための事業を興すためのマーケティング手法です。もともとは市民活動からもたらされたものであり、当社はNPOとの協働などによってごく自然にこの手法を学んでいきました。

日本ビッグイシューという出版社は、ホームレスが街角で販売する冊子を発行しています。1冊販売するごとに160円の収入がホームレスの人に入り、アパートを借りられるよう支援していく仕掛けです。社長の佐野さんは「ホームレスは福祉では救えない。彼らが出来る仕事を誰かが作り出してあげないといけない。」と述べています。福祉政策ではなく、ホームレスの自立支援をビジネスの手法を用いて実践していくという大胆な発想が、これからの地域活性化には必要な考え方です。

ソーシャルマーケティングによって、地域の潜在的な課題に対するソリューションを提供し、企業と地域のWIN-WINの関係を作り上げることが、これからの地域密着型企業と言えるのではないかと感じています。

この記事を書いた人

針生 英一

針生 英一(ハリウコミュニケーションズ株式会社)

地域活性化仕掛人。
企業セクターのみならず、行政セクターやNPOセクターとの幅広い連携を通じて、新たな地域の枠組みづくりを手がける。

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