表題の「蝶番」、最初に浮かんだ読み方は「ちょうばん」ではありませんか?
現在では間違いとまでは言えないのですが、ただしくは「蝶番」=「ちょうつがい」と読みます。
そして、現在では多くの場合「丁番」と書いて「ちょうばん」と読むことのほうが多いようです。
ということで、今回の話題は、これ。
蝶番は日本でも、古くから使われていて、(と言っても、もちろん上記の写真のような金属製・同形状とは限らず、同様の機能を持ったものですが)しかも多くの場合、2個以上をセットで使うので、2頭(蝶は「頭」と数えるのです)の蝶が雌雄番い(つがい)でいるように見えることから、「てふつがい」=「ちょうつがい」=「蝶番」と言うわけです。ちなみに「蝶々」が日本語の古語で「てふてふ」なのは御存知の通りかと。
「番い(つがい)」は「継ぎ合う(ふ)」が語源とされている言葉で、2つのものを一つに組み合わせる時に使われる言葉です。
弓道で「矢を弓に番える(つがえる)」と言うのも、矢と弓を一つに組合わせることから、この表現が使われるとのこと。
現在でも動物の雌雄の組み合わせには、「番いの鳥」や「犬を番いで飼う」等と使われていますが、私自身もそうでしたが「つがい」と言う言葉と「番い」という文字が、頭の中でそれこそ繋がらない=番いにならないんですよね。
「番」は、いわゆる「順番」等に使われる時の「番(ばん)」というイメージが強くて、辞書によると「順序立てたもののなかで順序が到来すること」という意味で表記されています。また合わせて「留守番」や「見張り番」などのように「同じ場所に留まって、見張る人もしくはもの」という意味も出ていました。
「番」という文字は、もともと「足跡」を表した象形文字からできたという話があるのですが、だとすれば、足跡のようにその場にとどまっているもの、もしくは足跡のように連続して連なっているものからのからのイメージで「順番」や「留守番」に使われる「ばん」としての音読みの「番」はなんとなくわかるような気がします。
では、訓読みの「番い」の方はどこでつながったのでしょうか?正直なところ調べきれてはいないのですが、「番い」を使った言葉の中に、「手番」(てつがい)という言葉を発見しました。これは、辞書によると、
1.平安時代の「騎射(うまゆみ)」「射礼(じゃらい)」「賭弓(のりゆみ)」などで、射手を一人づつ組み合わせて競わせること
2.段取り、手配
と、出ていました。
この1.の意味の場面を思い浮かべると、一組づつ番いになった射手が順番に登場して競うわけで、ここで「番い」と「順番」が意味合い的に混ざったのかなぁ、と、いうのが、私の想像です。
先に書いたとおり、「継ぎ合う」という意味の「つがい」という言葉は昔からありましたから、この言葉に「番い」が使われる元がこの辺りなのではないか、という想像です。
さて、表記の「蝶番」はやがて「丁番」との表記に変わっていくわけですが、いつから「丁番」と書かれるようになったのかはよくわかっていません。
丁半博打の「丁」が偶数の出目を表すので、2個セットで使われることが多い「蝶番」の偶数イメージと、「蝶」と「丁」という、音が同じで画数がグンと少ない文字で表現できることからか、「丁番」表記が主流になっていたのでは、という話もあります。
もちろ表記が変わっても読み自体は「ちょうつがい」のままだったものが、いつのまにか読み方まで安易な「ちょうばん」に変化してしまったようで。
ちなみに私のPCの辞書機能では、「ちょうつがい」と打って変換すると「蝶番」が、「ちょうばん」と打って変換すると「丁番」が出てきて、その逆や両方出るということはありません。
また、「兆番」という表記も結構ありますが、こちらは「ちょうつがい」でも「ちょうばん」でも変換されます。この「兆」は蝶番のカタチに文字が似ていて、かつ音が「ちょう」なので使われるようになったと思われます。
ちなみに英語では蝶番のことを「hinge」(ヒンジ)といいますが、この言葉は古い英語で「吊るす」という意味の「henge」から来ているそうで、現代英語の「hang」(吊るす)と同根のようです。
久々に建築関係の用語について書いてみました。
とはいえ、やっぱりムダ知識に偏ってしまうんですよねぇ。