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小さなギモン調べてみました!

建築・不動産から言葉のトリビアまで、仕事の中で見聞きした小さなギモンを調べて報告していきます。

2011年10月のアーカイブ

かまわぬ.JPG

左の絵(というか「柄」というか「マーク」というか)を読める方は結構いますよね。

「鎌」と「輪」と「ぬ」で「かまわぬ」=「構わぬ」と読みます。

江戸時代に、着物の柄として町奴(まちやっこ)達が好んで身につけていたもので、「怖いものなんてないぞ」「どんなこともお構い無しだ」という心意気を示したもののようです。

後に歌舞伎役者の七代目市川団十郎が舞台衣装に使って、当時の庶民の間でも流行しました。

江戸時代には、このような、いわゆるクイズみたいな看板や文字表現が結構ありました。

そういったものを総じて、「判じ物(はんじもの)」と呼ばれています。

本当は、江戸時代の識字率の低さもあって、絵や形で表現したのがベースにあるようなので、

そういった画像を紹介するのも面白いかと思ったのですが、画像の紹介は色々と問題もあるので、

今回は、文字のみの判じ物をいくつかご紹介したいと思います。

頭の体操のつもりで、時間がある時にでも、しばしお考え下さい。

 

■何の商売をしているお店でしょうか?

1.「十三里」
hint:食べ物です。

(将棋の駒の形の板に)「歩」
hint:販売していません。

(まな板みたいな板に)わ」
hint:裏側には「ぬ」と書いてあります。

 

■どういう意味でしょうか?

4.「一斗二升五合」
hint:「二升五合」は知っている人も多いと思いますが。

5.「七里酒」
hint:お酒の種類です。

6.「木頭切月中破」
hint:これは、江戸時代ではなく、平安時代の小野篁の出題。文字遊びですね。

 

■難読苗字・・・これも一種の判じ物ですよね。

7.「小鳥遊」
hint:「少女遊」も同じ読み。シチュエーションで考えて。

8.「四月朔日」
hint:だいぶ春めいてきたところで。

9.「十(漢数字の10)
hint:一から数えてみれば・・・。

 

■何歳のお祝いでしょうか?・・・「白寿」は「百」から「一」を引いて99歳のお祝いです。

10.「茶寿」
hint:草冠は昔「十十」と二つに分かれていました。

11.「皇寿」
hint:「皇」は「白」と「王」に分けて考えます。

12.「華寿」
hint:これも「華」を分解します。

 

「字謎」という言葉もあり、いわゆる文字遊びですが、

単なる「当て字」よりも、もう少し面白さというか「洒落っけ」があると思います。

個人的には、こういうことを面白がっていた日本人が、とても好きだったりします。

IMGP0053.JPG

 

写真は、有名な函館の「金森倉庫」です。

この倉庫の屋号マークを「かなもり」と読むのも、

一種の判じ物ですよね。

 

 

さて、解答です。

1.焼き芋(さつまいも)屋
→栗よりうまい→「九里」「四里」うまい→9+4=13で、こういう看板が出たそうです。
「十三里」はそのまま「じゅうさんり」と読んで、さつまいもの事を指したそうです。

2.質屋
→「歩」は「金」に成るので、こういう看板を下げたそうです。

3.銭湯(湯屋)
→「板」に「わ」=「わいた」=「(湯が)沸いた」で、銭湯の営業中の看板。
裏は「板」に「ぬ」=「ぬいた」=「(湯を)抜いた」で、本日終了。
→江戸時代に良く見られたのは、「弓と矢」の実物を模した看板だったそうです。
こちらは、「弓(ゆみ)」を「射る」で、「ゆいる」=「湯入る」という意味だそうで。

4.ご商売、益々繁盛
→「一斗」は「五升(ごしょう)」の2倍。で、「ご商売」
「二升五合」は、「ますます はんじょう」で、判りますよね。

5.どぶろく
→七里酒→二五里酒→にごり酒→濁り酒で、濁酒(どぶろく)

6.不用
→「木頭切」で、「木」の文字の上に出ている部分を切って「不」
→同様に「月中破」は、「月」中を破るように縦線を入れて「用」
これは完全に漢字なぞなぞみたいです。

7.たかなし
→小鳥が遊べる状況というのは、鷹がいないということなので。
→その昔は、少女でさえ、鷹にさらわれたのでしょうか?

8.わたぬき
→昔は着物(綿入れ)の中身の「綿」の量で、気温対策をしていました。
→「四月朔日」の「朔日」は「一日」の意味で、4月1日は衣替えの日の意味でもありました。
→春になると暖かくなって、「綿」を「抜く」季節になることから。
→尚、旧暦の「四月朔日」は現在の暦では5月の中旬頃にあたります。
→また、「四月一日」で「つぼみ」とも読むそうです。
→日付の苗字には、他にもこんなのがあるようです。
→「六月一日」・・・「うりわり」「くさか」
→「八月一日」・・・「はっさく」「ほずみ」
→「十二月一日」・・・「しはすだ」

9.つなし
→数字を数えて、「ひとつ」「ふたつ」「みっつ」・・・と続け、「十」だけは、語尾に「つ」がつかないので。
→漢数字一文字の苗字には、他にもこんなのがあります。
→「一」・・・「にのまえ」「よこいちもんじ」
→「九」・・・「いちじく」

10.108歳
→草冠の「十十」で20、「茶」の下の部分を分解して「八十八」、足して108。

11.111歳
→「皇」の上半分「白」は、「百」から「一」引いているので99
→下半分の「王」は、「十」と「二」の組合せなので12。足して111。

12.60歳
→「華」の字を分解していくと「十」が六個あるそうで。

※「判じ物2」の記事も書きましたので、ご興味がおありでしたらそちらもどうぞ。

DSCN5736.jpg

 

これが「辻標」です。

で、これが何かというと、実は仙台市内の88箇所に建っていて、仙台市の市制施行88周年記念事業のひとつとして、由緒ある町名や通名を後世に永く伝えていく為に、昭和52年に建てられたものだそうです。

写真は、芭蕉の辻の日本銀行敷地内にある「国分町」の辻標です。

写真では見えませんが、裏には「大町」の表示が有ります。

これ、なにせ88箇所ですから、マチナカに結構あって普段目にしているはずなのですが、意外と気づかずに見過ごしてるんですね。

解説も書いてあって、仙台に生活する者としては、それなりに為になる内容です。

例えば、この「国分町」の辻標には、以下のような説明文が書いて有りました。

「大町三、四丁目の境芭蕉の辻から北、二日町まで。開府の際国分寺門前町を移したという。毎年馬市が、また毎月一日から十一日まで伝馬発着の駅、年末には歳市と、特権の多い町として栄えた。明治初年富商人十九軒あり、十九軒店として宣伝した。」


???
大変興味深いものの、判らない言葉も結構有ります。

「大町三、四丁目の境芭蕉の辻から北、二日町まで。」は、基本的にいいでしょう。

ただ、当時は街区ごとの町名ではなく、通りごとに町の名前が有りましたから、現在の住居表示とは完全には一致しませんが。

で、次です。

 

「開府の際国分寺門前町を移したという。」

「開府」というのは、政宗が慶長6年(1601年)に仙台の町を開いた時ということだと思いますが、「国分寺門前町」っていうのは、どこの事なのでしょうか?

これは、現在の若林区木下にある「陸奥国分寺」というお寺の門前町のことのようです。「陸奥国分寺」は8世紀前半、奈良時代に建立されたとても由緒あるお寺で、これはこれで訪れてみたい場所です。

そんな場所ですから、やはりそれなりに栄えた町だったのでしょう。しかも「国分町」の名称の起源がこの「陸奥国分寺」にあったというのも新しい発見でした。

で、で、次です。

 

「毎年馬市が、」

馬市!

江戸時代の高速移動手段といえばこれだけですから、「馬市が開かれる」とは、今で言えば「モーターショー開催」みたいなものでしょうか。

姿や毛並み等見た目から、文字通りの馬力やスピード等、売主がそれぞれにアピールしたのでしょうねぇ。非常に見てみたい風景です。

さらに、次。

 

「また毎月一日から十一日まで伝馬発着の駅、年末には歳市と、特権の多い町として栄えた。」

「伝馬発着の駅」の「伝馬(てんま)」とは、国の中央と地方との間で、使者や物資、情報等の交換・運搬を効率的に行なう為のシステムです。時代により運用は、多少は違いますが。今で言えば電話やインターネット、あるいは公営の物流システムでしょうか?

基本、馬を走らせるので、さすがに長距離を一気に走らせると、馬もバテます。そこで、街道沿いの各所に「駅」をおいて、馬を乗り継いだりした中継地点としたわけです。

「歳市(さいち)」とは、要するに「歳末市」で、いまでいう「年末バーゲンセール」でしょうか。当時は誰でもどこでも「歳市」を開くことが出来たわけではなく、それなりに人が集まりお金が活発に動くので、領主の許可が必要うだったのでしょう。

そして最後。

 

「明治初年富商人十九軒あり、十九軒店として宣伝した。」

「十九軒店」って、初めて聞きました。この「十九軒」がそれぞれどのような商売だったのか、ネットでは簡単にはわかりませんでした。いずれ調べてみたいと思います。

 

と、「辻標」が面白い、と言う話で始めましたが、そこの解説文を理解するのにも、結構知識が必要なのですね。

とはいえ、町で「辻標」を見かけたら、ぜひそこに書かれていること読んでみてください。全てがわからないまでも、想像をたくましくして、その町名がついた当時の仙台に思いを馳せるのも楽しいのではないでしょうか?

 

最後に、参考になるHPを紹介しておきます。

「辻標」
http://www.mvsendai.sakura.ne.jp/tuzihyou/tuzihyou.htm

全ての辻標の写真と解説文が出ています。実際に行けなくても、見るだけでも楽しいです。

仙台市文化財パンフレット 第35集 「辻標」 の案内
http://www.city.sendai.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/75/004.html

ちゃんと本も出ていました。1冊500円だそうです。興味がある方は、ぜひに。

この記事を書いた人

斉藤 一則

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