名月、天高く痩せる暇ない秋。
夕凪心地よく、ほの暖かい今宵は久しぶりに石巻で一献です。
思えば、もうかすみ始めた感もある大津波。
あのとき焼き付いた光景も、磯臭い潮の嗅覚もモノクロ写真のように映ります。
周回遅れの復興が、一部ではなくもしかすると多数かもしれない今、
元気市場を超えて暖簾かかる友福丸へ参ります。
往年の銘店、彷彿とするものは何もない真新しい客席。
僅かに少し、こだわりぶりの品書きが亭主の人を伝えます。
さぁ河畔を景色に、墨廼江で祝い酒しましょう。
一同、旧友福丸を知らない世代は、もちろんご満悦。
そこへきらきらの秋刀魚、平目の造りが登場。
うわ、美味しそう。
山葵良し・生姜佳し、旨いに決まってます。
かつてを知る人は前とは別物と言い、確かに同じ訳もなく、
しかしここから友福丸の再出帆が始まります。
こだわり親爺の唸りより、まちなか女子たちのヤンヤの歓声が
次の半世紀に向けた羅針盤かもしれませんね。
※奇しくも新造船の浸水式の日、帰路ばったり亭主と握手。御縁何よりです。