思いがけないタイミングで嫌いだったものが好きになる。
そんな魔法のようなことを中学生の頃に体験した。
私が嫌いだったものは「茶碗蒸し」。
小さい頃、その「茶碗『むし』」という言葉に中に虫が入っているのではと思い
想像豊かだった私は匂いを嗅いだだけで口元にモザイクが掛けられる勢いだった。
以来、原材料を知っても私は食べる事が出来なくなったのである。
そんなこんなで十数年。
その頃少しだけ入院をしており、流動食から固形食へと変わる段階だった。
お昼に出てきたのは「茶碗蒸し」。
ああ久々の固形物なのになんて日だ、と正直思ったものである。
しかしさすが胃袋に水分しか入らなかった数か月。固形物は途轍もなく魅力的にうつった。
恐る恐る口に運んでみると、優しいたまごと、ほんのり塩気を感じるダシが口いっぱいに広がった。
私の好物一覧に一品増えた瞬間である。
ついでに通常入っている海老やきのこといった具材の代わりに
細かく刻まれた絹豆腐が入ったシンプルな茶碗蒸しでした。
(今はどんな茶碗蒸しでも食べられる。)
まるでかく
作業部屋から飛び出してみつけた「風景」や「モノ」を書いたり、描いたり